今、「日本の木材」が見直されているワケとは? 木材が燃えやすいというのは、過去の話だった
健全な循環利用が森林を守る
そもそも森林には、二酸化炭素の吸収、水資源の貯留などさまざまな機能が備わっている。とりわけ近年、多発する自然災害に対しては、雨水を蓄積する効果によって、豪雨などによる洪水の発生を抑えるほか、木々が地中に広く根を張ることで土壌が安定し、土砂崩れを防ぐなどの効果がある。
世間では環境保護のために森林伐採は控えるべきだという議論もあるが、実は森林の効果を最大化するには、適切な手入れ(間伐)と伐採、植樹を繰り返すというサイクルが必要なのだ。
木材を使用することは、香りや手触りで気持ちを和らげたり、清涼感を与えたりと、人の感性にさまざまな効果を与えてくれるだけではなく、地球温暖化防止や環境保全のために掲げられているSDGs(持続可能な開発目標)を実現することにもつながる。
そうした中、国産材を使って、街の活性化を図っているのが「ノーザンステーションゲート秋田」プロジェクトを推進するJR東日本秋田支社だ。同プロジェクトでは、JR秋田駅を観光の拠点にするため、観光案内所、待合ラウンジの内装や家具、駐車場ビルや東西連絡自由通路のファサードなどに秋田県の名産品の1つである「秋田杉」を使用することで木質化を行ってきた。
その狙いについて同社地域活性化推進室長の田口義則氏に話を聞いた。
「これまで駅の待合室というのは、主に列車を待たれる方やお出迎えにいらっしゃる方が待つために存在していました。しかし私たちは、秋田駅を日常における生活や観光の情報発信拠点として、ぬくもりのあるコミュニティーを築ける場にしたいと考えたのです」
同プロジェクトは秋田県、秋田市、JR東日本の3者連携協定によって2015年からスタートしたもの。木質化は、秋田県から秋田杉活用の実証実験要請を受けていた秋田公立美術大学の小杉栄次郎教授より、「秋田駅をモデル事業で使ってみたい」という申し出があったことがきっかけだ。そこから秋田市の中心市街地の基本計画が策定されるに当たり、どのように秋田駅前をリニューアルしていくのかという議論が始まった。