どうする中小企業?誤解だらけの働き方改革 トップダウンで進められない企業は失敗する

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働き方改革を進めようとする経営者には、「働き方改革で残業時間を減らす分、人を雇わなければならない。しかし、人手不足で採用が進まない」と悩んでいる人もいるだろう。

人手を増やすことは本質的な解決策ではない。考えるべきことは、同じ数の従業員でいかに効率よく業務を進め、労働時間を減らすか、というプロセスの改善だ。むしろ、人手不足という現状は、働き方改革を加速させるテコになる。

生産性向上は、大企業はもちろん、中小企業でこそ注力すべきだと高橋氏は語る。ただ、中小企業は1人ひとりの働き手が担う仕事の範囲が広い分、人材の再配置などで労働時間の削減に対応することが難しい。施行された働き方改革関連法では、一部項目の中小企業への適用開始時期を大企業よりも1年遅く設定している。対応には周到な準備が欠かせないため、時間的猶予が与えられている。しかし、まだ準備に着手しなくてもいい、ということではない、と高橋氏は強調する。

「準備のための猶予期間である、ということを忘れてはいけません。働き方改革は技術論やノウハウの問題ではなく、企業文化や風土の問題です。人材育成から組織のあり方まで変えることが問われていますので、トップダウンで取り組まないといい成果は出ません」

人間とAIとの理想的な分業を

日本総合研究所
チェアマン・エメリタス
高橋 進
一橋大学経済学部卒業。住友銀行を経て、日本総合研究所へ出向。2005年から2年間、内閣府政策統括官を務め、政策立案等も担当した。2007年に日本総合研究所へ復帰し、2018年、同チェアマン・エメリタス(名誉理事長)就任

働き方改革では、より価値の高い商品やビジネスを創出し、金額換算での生産性向上を目指すべきだ。商品の付加価値が高まらない仕事は、どんどん機械に任せたほうがいい。

「ITやAI、ロボットなどを効果的に活用すれば、労働時間の短縮が進みます。それによって生まれた労働者の時間的余裕の一部を、価値を生み出す仕事に適応するための勉強の時間に使ってはどうでしょうか。働く側も機械にはできないことを習得し続けないと、人材不足の世の中であっても、やりがいと見返りが大きな職に就くことはできません」

価値ある商品やビジネスにつながるイノベーションを生み出すためには、多様な価値観や知識、スキル、経験を持った人材の力が必要だ。さまざまなバックグラウンドを持った人材が共存するためには、組織や人事制度、そして社内文化の面で寛容な職場が欠かせない。働き方改革に成功した企業では、こうした多様性を育む素地が出来上がり、さらに競争力の向上が望めるに違いない。