「必要な場所」に「必要な医薬品」が届く理由 災害時に再認識する医薬品流通企業の重要性

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日本全国に流通している医療用医薬品(医師の処方箋に基づいて調剤してもらう医薬品)は1万数千種類に上る。これらを約24万カ所の医療機関に届けているのが医薬品卸企業だ。 普段、当たり前のように手に入れられる環境が用意されている医薬品だが、「必要な場所に必要な医薬品を届ける」ということが、いかに難しいか。そして、それを実現するために医薬品卸企業がどれほど尽力しているのか。災害時の取り組みを基にひもといていく。

2018年夏、西日本を中心に深刻な被害を出した西日本豪雨。各地で河川の氾濫や住宅の浸水、土砂災害などが発生し、死者は200人以上(総務省消防庁)に上った。道路の寸断や鉄道の運休をはじめ、電気・ガス・水道が供給されなくなるなど、ライフラインにも大きな影響が出た。

災害時に問題となるのが医薬品の供給だ。交通網が寸断されて物流が滞るほか、医療機関が被害に遭うと在庫がなくなってしまい、最悪の場合、供給がストップしてしまう。

こうした事態に陥らないために、奮闘しているのが医薬品卸企業だ。日ごろは黒子のように目立たない存在だが、有事の際には全国に張り巡らされたネットワークを生かし、医薬品を医療機関に届ける。西日本豪雨でもその力を発揮。自らが被災しながらも、その使命を果たした。

医療機関からの要請に柔軟に対応できた理由

西日本に本社がある医薬品卸企業の中国エリア営業部門は、広島、岡山の両県を中心に、病院や診療所、調剤薬局など約2000の医療機関を担当している。

西日本豪雨で、エリア内にある6つの事業所に被害はなく、大きな混乱はなかったものの、従業員の親戚が床上・床下浸水する被害に遭ったほか、電話で連絡が取れない従業員がいたため安否確認システムで状況を確認したという。

医療機関の被災状況の把握は容易ではなかった。1軒1軒電話をして確認、電話が通じないところは直接訪問して需要を確認した。多くの医療機関から、ケガを治療するための消毒薬をできるだけ多く持ってきてほしいという要望があったという。

需要の確認後に問題となったのが配送だ。

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