「学び続けるトップ」こそ企業の成長を加速する 労働時間を減らすことばかりが改革ではない
「働き方改革関連法」が本格的に施行されている今、「労働時間の削減」は、どの企業においても急務となっている。ただし、「働き方改革」の真の目的は、単純な「時間の削減」ではなく、「生産性の向上」にある。グロービス経営大学院の経営研究科・研究科長でリーダーシップ系や思考系科目の教鞭を執る田久保氏に、「働き方改革」時代の「時間の使い方」について提言してもらった。
着目すべきはアウトプットの大きさ
日本が初めて経験する急速な少子高齢化と人口減少。今、「働き方改革」が必要な理由はそこにある。生産年齢人口が減っていく中で経済を成長させていこうとすれば、これまで労働の主たる担い手とはされてこなかった、ライフイベント後の女性や、シニアの力を活用していくという方向になる。そうなると、必然的に長時間労働に頼る日本的雇用慣行を変えるしかなくなってくるのである。
一方で、グロービス経営大学院の田久保善彦氏は「今の働き方改革の議論は、残業を減らすことやリモートワークといった働き方のスタイルにフォーカスしすぎています」と、「働き方改革」が本来の目的とは違う「手段」の部分にばかり注目されていることを指摘する。
「長時間労働がいいとは決して言いません。ですが、世界を見ると、中国やインドの人をはじめとして、アメリカのベンチャーなどでも、多くの人がそれぞれのビジョンに向かい、ものすごい勢いで働いています。今はそういう人たちとも競争しなくてはいけない時代です。そのときに働く時間を減らすことだけを目的にしていたら、世界の競争から取り残されるだけだと思います」
サービス残業や休日出勤を強いる「ブラック企業」問題がいまだ取り上げられる日本にとって長時間労働の是正は間違いなく必要である。前述のとおり、生産年齢人口の減少による労働力不足を目の当たりにした「課題先進国」である日本では、さまざまな働き手による、さまざまな働き方のスタイルを取り入れ、社会構造の変容に応じていかねばならない。
そうした中で、重要なのは「時間の長さ」にばかりとらわれないことだと田久保氏は言う。今は、アウトプット(成果)をインプット(時間)で割った「生産性」を上げるという過程の中で、インプットを小さくすることにばかり議論が終始してしまっている状態になってはいないだろうか。
「インプットを減らせば生産性が上がるのは確かです。しかし、本来であれば、アウトプットを大きくするというアプローチも避けては通れないはずです。アウトプットを大きくするためには、今までの経営を改革し、イノベーションにより新しいものを生み出さなければいけません。そのための多様性であり、そのための『働き方改革』なのです」
個々人の学びの総和が組織の成長に結びつく
生産性を上げ、そこから新しい付加価値やイノベーションを生み出すことができなければ、次の成長ステップに進むことは難しい。インプットを小さくするところで止まっていては、イノベーションの創発には結びつかないというわけだ。その点について田久保氏は次のようなわかりやすい例を挙げたうえで、「学び方改革」をキーワードとして挙げた。