ブロックチェーンの本質は「信用創生」 企業が生き残りをかけて挑むデジタル変革
KPMG Originsはすでに、オーストラリアで高価格帯のワインのトレーサビリティーシステムにPoCとして実装されている。これは、生産者、バイヤー、輸送業者、認証当局などのステークホルダーが、それぞれ規定を満たしている証明をブロックチェーンに記録。個々のワインについて、改ざんが不可能なブロックチェーンに履歴を残すシステムだ。
消費者がワインのラベルをスキャンすると生産者から栽培、醸造時間、倉庫に保管された期間などを瞬時にブロックチェーンから呼び出すことができるため、消費者の生産管理への信頼に対して、裏付けのある情報を提供して応えるシステムといえる。
「従来の履歴追跡システムが集中型システムなのに対し、KPMG Originsはブロックチェーンを活用した分散型システムですので、データの信頼性を確保したままコストや事故のリスクを下げられることに加え、各ステークホルダーが持つデータが容易に一元化されます。集中型システムの場合、各ステークホルダーが持つマスターデータを共有するにはシステム構築費や、インターフェースの開発費もかかるうえ、データの食い違いも発生するなど非常に大変ですが、KPMG Originsはそうした問題を解決でき、なおかつデータは暗号化でアクセスコントロールされているため、機密情報まで共有されることはありません」
KPMG Originsは今後、日本国内でも、コンプライアンスが重視されるセクター、具体的には農産物などへの展開を予定しているという。
企業のデジタルトランスフォーメーション実現に貢献
ブロックチェーンの機能として今後、実用化が期待されているのはトレーサビリティーに加え、Proof of Existenceといわれる身分証明書等の記録システム、自動的に契約書の事項をモニタリングして遂行するスマートコントラクト、ID認証を第三者ではなくブロックチェーンの分散型システムで自己管理する自己証明型身分証(Self Sovereign Identity)の4つが柱になると豊田氏は説明する。
「これからAIやIoTが発展していくと、仮想空間と現実空間が融合されていきます。その際、いちばんネックになるのが認証です。例えば、マシン同士がコミュニケーションを取る場合、どうやって認証するのか。あるいは膨大なデータを集めて分析したくても、データ元の認証がしっかりしていなければ、信頼性が担保できず使えなくなります。『KPMGイグニション東京』では、そうした問題を可視化してクライアントと共にソリューションを探し出し、企業が生き残りをかけて挑む、デジタルトランスフォーメーションの実現に貢献していきます」