
ブロックチェーンの活用が新しい可能性を広げる
朝倉 モーニングスターは、第三者投信評価機関として、中立的・客観的な投資情報の提供を行い、個人投資家の的確な資産形成に努めています。同時にモーニングスターはSBIグループの一員でもあり、私はグループのブロックチェーン分野も管掌しています。
SBIグループはすでにブロックチェーン(分散型台帳技術)を活用し、接続銀行間の24時間365日のリアルタイム送金を安全かつ快適に行える「マネータップ」と呼ぶサービスを提供しています。3月19日にはさらなる普及・拡大を目指し、同サービスを手がける子会社も設立しました。
「マネータップ」は口座番号がわからなくても、QRコードや携帯電話の番号で送金ができます。国内外送金をはじめ、従来の決済システムを変えることになると自信を持っています。
一橋大学名誉教授
野口 悠紀雄
野口 金融は情報を扱うという点では情報産業です。新しいITが取り込まれることにより金融が大きく変わるでしょう。その要素となるのがまずAI(人工知能)、そしてブロックチェーンです。保険の分野ではすでにP2P(ピア・ツー・ピア=個人間)でお金を出し合うような新しい形の仕組みも生まれています。
朝倉 ブロックチェーンといえば仮想通貨というイメージを持つ人が多いように思いますが、仮想通貨の価格が一時期のように投機的に高騰してしまうことは、決して望ましいことではありません。
仮想通貨自体のファンダメンタルバリュー(本源的価値)はほぼゼロなので、日々の生活における決済や送金で利用されることにより、価値が上がるのが望ましい姿です。
野口 仮想通貨であろうと、国が発行する貨幣であろうと、通貨そのものには価値はありません。人々が価値があると思えば価値があるし、価値がないと思えばないのです。金本位制の金貨などとは異なります。仮想通貨が広く使われるためには、多くの人から「便利だ」と思われなければならない。
例えば、先ほどの送金のことですが、仮想通貨はリアルタイムかつ低価格で送金できるのが特長であるにもかかわらず、一時期は価格が高騰してしまったために銀行の送金手数料よりも高くなるという現象が起きました。これでは使えません。
ブロックチェーンが資金調達に使われるといった新たなスキームも生まれています。ICO(Initial Coin Offering)と呼ばれるものです。ただし、2017年ごろには仮想通貨の価格が高騰したり、問題のあるプロジェクトが多数生まれたこともあって、海外ではICOが規制される動きもありました。
こういったネガティブな例もあるものの、私は、ブロックチェーンは新しい可能性を開いたと考えています。
管理者が不要になる中で生き残るためには
朝倉 智也
朝倉 ブロックチェーンは仮想通貨を中心として、金融業の中で活用されるイメージがありますが、金融以外のさまざまな分野でも活用が検討されています。
野口 ブロックチェーン=仮想通貨というわけではありません。ブロックチェーンとは、デジタル情報を書き換えることができないようにする仕組みです。情報そのものは隠されているわけではなくて、むしろオープンになっていて非常に透明性が高いのです。
この技術を使えば、サプライチェーンのトレーサビリティー(生産履歴の追跡)なども簡単に実現できるようになります。情報の書き換えができませんから、公文書の書き換えなどの問題も起こらなくなります。
朝倉 野口先生のお話を伺っていると、ブロックチェーンの活用メリットは非常に大きいと感じられます。それにもかかわらず、日本の企業や官公庁などで導入が進んでいない理由はどこにあるのでしょうか。
野口 大きな理由は、多くの人がブロックチェーンについてまだ知らないことです。お話ししたように、仮想通貨=ブロックチェーンと考えている人が多い。私が著作などで啓蒙しているのもこのためです。
朝倉 私もこれまで、客観的な投資情報の提供を通じた「投資家主権の確立」と、着実な資産形成のための分散投資の啓蒙といった投資環境の整備に一貫して取り組んできました。その過程で、さまざまな企業の成長や衰退も見てきました。今後はブロックチェーンによってシェアリングエコノミーなどのビジネスも成長すると考えられます。野口先生は未来のビジネスや生活はどう変わると見ていますか。
野口 シェアリングエコノミーでは、配車アプリや民泊仲介サービスが急成長していますが、これらは中央集中管理型です。ブロックチェーンでは、鍵のやりとりすら自動化することができます。ブロックチェーンは管理する会社や管理者そのものを不要にします。
朝倉 ブロックチェーンやAIによって実現する次世代の革命は、インターネット革命を超える可能性があります。新たな革命を私どもSBIグループが牽引し、人々の生活がより安全で便利になる世の中に貢献していきたいと思います。本日はありがとうございました。