デジタル変革と次世代ERP 「2025年の崖」を乗り越えるために
セッションII
デジタル時代のマイクロソフトプラットフォーム戦略とビジネスアプリケーション
~企業システムに求められる基幹プラットフォームとは何か MS戦略と先進の事例紹介~
マイクロソフトの大谷健氏は、デジタル変革には、レガシーシステムに閉じ込められているデータの刷新が必要と強調。異なるERP間でデータを連携可能な形にするオープン・データ・モデルの動きに言及した。同社クラウド型ERP「Dynamics 365」は、コネクターを使って既存ERPからデータを取り出せる。またERPにデータを蓄積、活用するため、専門知識がなくても業務アプリを作ったり、データの収集・加工の自動化、可視化(BI)・分析機能(AI)を備えたPower Platformを提供している。「今後はシステムを作り込むと、激しい変化に対応できなくなる」とグローバル標準化システムの利用を呼びかけた。
Dynamics 365のソリューション提供パートナー、Annataの岡寛美氏は、長寿命な産業機器を「デバイス」と捉えてライフサイクルで管理する「Annata 365」について、デバイスごとに販売、アフターサービスなどのデータを見える化して蓄積、AI分析した結果は売上向上などに役立つと説明。データのテンプレートを統一し、サブスクリプション事業のグローバル展開に活用している建機メーカーの例を紹介した。
セッションIII
SAPのマイグレーションの勘所
~2025年の保守切れを迎えるSAP、次世代ERPのマイグレーションアプローチとは?~
三菱電機インフォメーションシステムズの中塚善之氏は、デジタル変革と2025年の崖の保守期限という2つの問題から迫られる「レガシーシステムから次世代ERPへの移行」について、現行ERPを止めて新環境に移るリビルド(作り直し)と、現行ERPを動かし続けられるようにするコンバージョン(変換)、の2通りのアプローチを挙げた。現行ERPがコンパクトに作られていて、導入効果を最大化できていればコンバージョン。アドオンが多く、システムが複雑化・肥大化している場合はリビルド、という選択の目安を提示。また、標準化されたプロセスで、最新のデータを使って、経営管理のシミュレーション・分析を可能にしたり、製造現場の問題箇所の発見に役立てている「コンパクトなERP」の成功例を説明した。同社提供の、現状システムのシンプル度アセスメントを早急に受け、時間切れのコンバージョンになる前に、アプローチを決断するよう呼びかけた。
ディスカッション
検証! デジタル変革と次世代ERP
最後に、登壇した5人が次世代ERPへの刷新の進め方や、グローバル展開についてパネルディスカッションした。岡氏は「新たなシステムは、現場から反対されやすく、トップがもり立てることが必要。Annataは、海外のベストプラクティスを製品の一部として提供している」と述べた。中塚氏は「シンプルなERPを実現し、デジタル変革に対応できる組織は、スモールスタートして、拡張、グローバルへの展開が速い特徴がある。まずは、アセスメント、PoC(概念実証)を始めることが大事」と訴えた。豊田氏は「まず、現状を可視化し、システムが変われば楽になると現場を説得し、経営を納得させる材料をそろえること」を提案。グローバル標準化は「データを統一するマスターモデル作りが起点になる」と述べた。大谷氏は「クラウドによってデータを活用した新たなビジネスモデルが登場している。当社プラットフォームに共通モデルで保存したデータは、他社のツールを使った分析、活用もできる」とクラウド化を促した。モデレーターの秋元氏は「クラウドのスピードのメリットを享受するには標準化が大事になる」と締めくくった。