「科学的」人事戦略 データ活用がもたらす、人材活用の変革
主催:東洋経済新報社
共催:プラスアルファ・コンサルティング
基調講演
「AI時代」の働き方改革・デジタルトランスフォーメーション
~経営×人事×AIの融合が導く"企業"と"働く人"の新しい関係~
産業構造をAI等が変える第4次産業革命と超高齢化が「日本の働き方を大きく変える」と提起した経済産業省の伊藤禎則氏は「長時間労働是正にとどまらず、働く人のモチベーション、エンゲージメントを高め、生産性を向上させることが、働き方改革第2章のテーマ」と訴えた。その人事戦略のポイントとして、労働時間や勤続年数に代わり成果とスキルで評価すること、働く人の多様なニーズに対応してフリーランス、テレワーク、兼業などのメニューを拡大し、働き方をパーソナライズすること、の2点を挙げて、「そこではAIとデータ活用が威力を発揮する」とテクノロジーに期待した。一方で、働く側にも「プロフェッショナルとなる責任が生じる」。とくに人生100年時代で75~80歳まで働くことが一般的になれば、自らキャリアを設計し、スキルを更新する必要があると指摘。企業には「新たな社会的責任として、社員に成長機会を提供することが求められる」という考えを示した。
講演
日本の人事を科学する
~人事部門におけるデータ活用とPDCAサイクルの必要性~
人事経済学が専門の早稲田大学の大湾秀雄氏は、デジタル化の進展に伴い、ダウンサイドのリスクが限定され、アップサイドの収益ポテンシャルが大きい「スター事業」のビジネスに占める割合が高まると指摘。スター事業では、従来型の堅実な人材より「異彩を放つリスキー人材が求められる」と述べた。しかし、とがった個性の人材は嫌われやすいため、1人の担当による面接を多段階行う階層的選抜では排除されがちになるとして、スター事業の採用活動では、構造化された質問を共通に尋ね、複数の面接者チームの協議による選抜を推奨。適性検査も、外部ベンダーの基準に頼ると画一的人材に偏るとして、自社に合った独自の尺度を設定する必要を訴えた。また、人事データ分析は、個人にひも付けして選抜の参考にするよりも、全社的な改善点の探索や、人事施策の効果測定に活用すべきと強調。ハイパフォーマー分析で、その能力の特徴を把握し、研修や採用に生かしている企業の事例を示した。最後に「社員のためという原則を守らなければ、不信感を抱いた従業員が調査に正直に回答せず、正しい情報を得られなくなる」と注意を促した。