"ビジネス"の現場で本当に役立つ英語力を 最新の英語学習法を上手に活用し身に付ける
ビジネスパーソンにとって「英語格差」が切実な問題に
―ビジネスがグローバル化するに伴い、ビジネスパーソンにとって、英語を使えることがますます重要になっているように思われます。鳥飼先生はかねてから「英語格差」の問題を指摘されていますが、改めてこの意味をお聞かせください。
鳥飼 「英語格差」は、英語で”English divide”と言い、元は、情報格差を意味する”digital divide”(デジタルデバイド)から来ています。「デジタルデバイド」はパソコンやインターネットを利用できる人とできない人の情報の格差を表しています。「英語格差」は同様に、国際共通語である英語がわからないと、重要な情報を理解できず情報弱者になることを意味します。例えば、2011年に発生した東日本大震災の際、英語でインターネットを検索し海外の情報を得られた人が原発事故などの情報をすぐに入手できたのに比べ、英語が苦手な人は政府が発表する少ない情報だけで判断せざるをえませんでした。
「格差」というと、英語ができると昇進したり海外赴任ができるといった狭い範囲のイメージを持つかもしれませんが、それよりも大きいのは、情報を英語で得ることができるかどうかです。災害時に限らず、ビジネスにおいても最新の情報を英語で得ることができれば情報の量も深さも、日本語だけとは大きく差が出ます。
―ビジネスパーソンの中には少なからず、英語が苦手という人がいます。英語嫌いから脱するにはどのような考え方が必要でしょうか。
鳥飼 日本で英語嫌いの人が多いのは、ある意味で仕方ないところがあります。というのも、中学生の頃から、今や小学生でさえ、英語ができなければならないという圧力がとても強いのです。親も先生も、数学ができなくても責めませんし、体育ができなくても平気だけれど、「英語だけは」と口癖のように言います。小学校、中学、高校、大学とずっとそう言われ続ければ嫌いにもなりますね。ならばもう、英語は嫌いと認めればいいと思います。そして自分の得意な分野を生かす方に切り替えたらどうでしょう。
ただし、仕事の内容によって英語が必要となったら、嫌いでもやるしかありません。ところが、面白いことに、英語嫌いな人でも仕事に関係する英語は、できるようになります。仕事にのめり込んで、これは海外ではどんな状況になっているのかと調べたくなったら英語で調べる。内容を知りたいからわからないところは辞書も引くでしょう。そうやっていくうちに、自分の仕事に関しては読めるし、ある程度は書くことができるし、話すこともなんとかできるようになります。日本のビジネスパーソンの多くは、そのくらいの基礎力は学校で身に付けています。
伝えたいという思いがあれば英語のほうが後から付いてくる
―ビジネスパーソンであれば仕事に関係ある単語などから覚えるのも1つの方法ということですね。どう話すかよりも、何を話すかが大事だということでしょうか。
鳥飼 そのとおりです。ネイティブスピーカー並みに流暢な発音で話す必要はありません。というのも、これから世界のビジネスの現場で会う人は、必ずしも米国人や英国人ばかりとは限らないからです。アジアなどではむしろビジネスの相手も英語が母語でないという場合がほとんどでしょう。相手も英語が完璧でないわけですから、むしろ国際共通語としての英語が必要です。発音にこだわるよりも話す内容を練っておいたほうがいいのです。
もちろん、自分の仕事についてはある程度は話ができるでしょう。さらに日本の文化や歴史、今の世界で話題になっていること、例えば最近なら米朝会談などについて、自分の意見を述べられることが大切です。日本人の中にはこのようなときに、”I don't know.”と言って笑ってごまかしてしまう人がいますが、これはよくありません。自分の意見が言えないと、教養がなく人間として魅力がないと思われてしまいます。ビジネスにも影響が出かねません。もちろん、そうならないためには日ごろから日本語で自分の意見が言えるようにしておくことが大切です。日本語で話が続かないのに、英語で続くはずがありません。