
電子部品大手として国際優良銘柄の一角を占めるTDK。コンデンサをはじめとする電子部品や各種センサ、HDD用磁気ヘッドなどを中心に海外売上高比率9割と早くからグローバル化を進めてきたが、今デジタル化が急速なスピードで浸透していく中で、新たな施策を打ち出している。
それが2019年3月期から始まった新中期3カ年の基本方針”Value Creation 2020”だ。同社はこれまで80年以上にわたり「モノづくり」を基本に市場にプロダクトアウトしてきたが、これからは「コトづくり」発想によるビジネスをさらに拡大していきたい方針だという。TDK執行役員で技術・知財本部本部長を務める松岡大氏は次のように語る。
執行役員
技術・知財本部本部長
松岡 大
「この発想は、生活の中にある新たなソリューションを実現するための製品や、サービスなど市場のニーズをいち早く取り込み、それらを実現する高品質な電子部品やシステムを提供することにあります。このコトづくりからモノづくりにつなげていくビジネスサイクルを推進するためにも、お客様とのネットワークや、ICメーカー、IoTのソリューションパートナーとのコラボレーションが欠かせなくなっています。これまでTDKの直接のお客様ではなかった方々とも、さまざまな事業を創造するための起点として、新たにスタートした日本橋の新本社を活用していきたいと考えています」
18年11月から稼働した日本橋新本社は、世界に広がるサプライヤーやビジネスパートナーなどステークホルダーとの交流の場にするとともに、世界中のグループ社員10万人超をつなげる中枢拠点と位置づけている。今年に入り千葉県市川市のテクニカルセンター新棟も稼働した。同センターでは、米・独・中国・イスラエルといった世界の主要な研究・開発拠点とクライアントをつなげることを目指している。
「TDKの日本橋新本社に行けば、新しい情報が入手できる、ビジネスのヒントが得られると思っていただきたい。来社される方にとって得るものがある本社としたいのです。また、これからのTDKを担う若手のビジネスパーソンや就活生にとっても、仕事面やファシリティー面で魅力のある会社であると感じてもらい、優秀な人材を獲得するチャンスを広げたいと思っています」
日本橋新本社では、「働き方改革」を意識したオフィスデザインを採用している。例えば、新しい発想を生み出すために、毎日異なるメンバーとコミュニケーションができるよう、席はフリーアドレスとなっており、現在試験運用中の在宅勤務の実現も視野に入れる。
また、従来あった社員食堂を、従業員が気軽に集えるカフェとしてリニューアルした。就業時間中いつでも利用できるのはもちろん、そこで仕事をすることも可能となっている。毎週水曜日の夕方からは、リラックスしたムードで社員同士が交流できるよう、バーラウンジとしてもオープンされているそうだ。
「私たち日本人社員はもはや全体の1割にすぎません。海外の拠点も広がる中で、大事になってくるのがコミュニケーションです。コミュニケーションはまさにイノベーションの源泉です。多様性が高まる中、コミュニケーションの場を増やしていくことで、新たなビジネスチャンスをつかんでいきたいと考えています」
さらに日本橋新本社では「レゾナンス」を設置し、会社の歴史と概要が一目でわかるグラフィックウォールや最新技術のデモ展示を行っている。
「TDKはどういった会社なのか。何ができる会社なのか。それをお客様にイメージしていただけるような工夫を施しています。このレゾナンスを入り口として、千葉県市川市のテクニカルセンターにあるテクノスタジオ(技術や製品のより詳しい展示スペース)と連動しながら、お客様のニーズを捉え、ビジネスのコラボレーションを高めていきたいと考えています」
デジタル化の進展に伴って、同社がとくに力を入れているのがIoT、自動運転、医療、通信(5G)、再生可能エネルギー、ロボット、VR(仮想現実)・AR(拡張現実)の7つのアプリケーションだ。
「現在、インダストリー4.0といわれるように、あらゆる産業分野で革新的な技術が導入されようとしています。例えば、自動運転のジャンルでは従来以上の電子部品が必要となっており、チップコンデンサが1つでも故障すれば、機能不全に陥ってしまう。そのために今必要とされているのが、壊れない電子部品なのです。現在も限りなく壊れない電子部品をお客様に提供していますが、これからは工場内のビッグデータなどを活用しながら、不良品をゼロにする”ゼロデフェクト”を目指したいと考えています」
TDKの基盤技術は磁性にある。そして、その技術をセンサなどに応用し、最先端技術に発展させてきた。こうしたTDKの技術は、今後、デジタル化社会が進む中で、欠かせないものになっていく。松岡氏が言う。
「米シリコンバレーなどを中心に、デジタル化社会を実現するためのITサービスやシステムはどんどん進化しています。しかし、それらを具現化するために必要不可欠となってくるのがわれわれの技術なのです。もっと言えば、日本の技術力がなければ、デジタル化を具現化できないのです。これから新たなソリューションをどう提供できるのか。そのためにもお客様とよりつながっていくことが大事になってきます。今後は新本社を軸に営業部門や技術開発部門が積極的につながっていくことで、お客様のニーズを捉えていきたいと思っています」