AIへの「漠然とした期待」を具現化するコツ オンプレミス=レガシー、の偏見こそ危険
鈴木 クラウドからデータを持ってきて「IBM Z」に投入し分析できる。このメリット自体は非常に大きく、魅力的だと感じます。しかしその一方で、オンプレミスでデータを持つ利点はあるが、柔軟性・利便性が高いクラウドにデータを預けたほうが使い勝手が良いのではないか?という議論もあります。どちらを選んだらいいのか、悩んでいる企業も多いようです。
石井 データをクラウドに置くのか、それともオンプレミスで持ったほうがいいのか。この問いには、はっきりとした正解はありません。絶対に外に出せない、漏洩した場合のリスクが高いデータに関してはオンプレミスを選ぶべきで、そうした絶対的な要件がない場合には適材適所でクラウドを利用したり、オンプレミスの分散環境を使ったりなどの選択肢が考えられますね。
鈴木 メインフレームといえば、可用性や堅牢性といったメリットが大きいですよね。
石井 はい、自社のデータがそうしたメリットに適合するかどうかが、いちばんの判断条件です。また、メインフレームで持つデータとクラウド上にあるデータを合わせて分析したいとき、「IBM Z」ではデータを集約してメインフレーム上に取り込み統合、分析する仕組みを提供しています。
専門知識は不要、コスト削減も可能に
鈴木 スピード感や、柔軟性も兼ね備えているのですね。どのような時に力を発揮するのでしょうか。
石井 例えば、不正検知がその代表です。ある送金が不正なものかどうか調べる際、クラウドでやるなら一度ネットワークを介してクラウドに行き、分析処理を行って結果を確認する必要があります。しかし、このような形態では厳しいSLA(Service Level Agreement、サービス品質の保証)を達成することは困難です。そこで検知の処理をメインフレーム上に持ってくることでこの問題を回避し、ほぼリアルタイムで分析処理を行えるようにしました。同時に、不正の手口の変化に合わせて検知モデルを更新するサイクルも短縮でき、不正送金が行われるリスクの低減にも寄与します。
鈴木 具体的には、マネーロンダリングや振り込め詐欺の防止に役立ちますね。メインフレームは第一に堅牢でなければならないという制約があるため、スピード感がない、やりたいことが自由にできないという不満を抱えている企業もあるかもしれません。しかし今は柔軟性も向上し、犯罪防止に活用できる水準にまで進化しているのですね。
石井 はい。一方で、メインフレームは、レガシーなプログラミングやシステム系の専門家しか使えないというイメージがいまだに根強いようです。しかし現在は、開発でも運用でもまったくそんなことはありません。また、これまでのメインフレームはCPU使用分だけ課金する料金体系への懸念から、データ量の多い処理は別のプラットフォームで行うケースが多くありました。しかし最近のメインフレームは、所定の条件に合致するデータ処理は課金対象外とする特別なCPUなど、コスト低減の仕組みを多々提供しています。例えば、データ量の多い機械学習もメインフレーム上で実現可能になっています。
前述のとおり、当社のメインフレームはこの春に55周年を迎えました。レガシーと誤解を受けることもありますが、実は新たなテクノロジーをどんどん取り入れて進化し続けているのです。AIや機械学習、データ分析に興味をお持ちの企業担当者には、新たな認識をもって検討を進めていただきたいと思います。