AIへの「漠然とした期待」を具現化するコツ オンプレミス=レガシー、の偏見こそ危険
企業が持つ、AIへの「漠然とした期待」
鈴木 最近のIT活用の潮流を眺めると、これからはAIがビジネスの武器になるらしい、5Gが始まるとIoTが具体化するらしい、という認識をもっている企業が多いですね。同時にそれらはいつ頃からどのように本格化していくのか、という時期についても関心が高まっています。
石井 お客様に基幹系システム更改の相談をいただく時には、「AIを活用できるようなシステムにしたい」という要望が必ず盛り込まれています。企業がAIを積極的に取り込んでいこうとしているのは間違いありませんね。特に大手金融機関ではニーズが旺盛ですが、逆にどう手をつけてよいのか悩んでいる企業が多いとも感じます。
鈴木 経営側には「AIを使えばいろいろなことがやれそうだ」という漠然とした期待感があるものの、社内ルール上の制約や技術的、予算的ギャップがあるようです。環境が整っていない状況で現場へ指示を出しても「この環境では難しい」と言われてしまう。例えばデータサイエンティストを雇う企業は増えていますが、実際にはあまりちゃんと稼働できていないという課題が生まれがち。そんな話をよく聞きます。
石井 当社調査によれば、企業にとって重要な情報の約80%は社内の基幹システムに存在しています。特に金融機関、医療機関などでは高度な個人情報を大量に持っていますが、一般にそれらの管理は厳重です。仮の障害を発生させるなどのシステムテストを行う時ですら、上部の承認を得ないと、データをそのままテスト環境へ取り出すこともできません。そのように厳重に管理されている基幹データを扱う時には、「この目的でこんなメリットを生み出すべくデータを取り出し、分析したい」と明確な要件をそろえる必要があるのです。
鈴木 企業にとっては、試行錯誤をしにくい状況ですね。実際に機械学習を試す場合でも、最初からデータが完成しているケースはなかなかありません。システムからデータを抜き出すにしても手間がかかり、依頼から入手までにタイムラグが発生することが多いです。
石井 そうしたニーズにも応えて、当社ではメインフレームの最新版「IBM Z」を開発しました。当社が1964年4月に初めて汎用メインフレーム「IBM System/360」を世に送り出してから55周年。改良を重ねて出来上がった「IBM Z」では最新機能を駆使して、メインフレーム内に蓄積されたデータをリスクを冒さずに取り出し、機械学習や高度な分析を行えます。