NO「研究オタク」、今どき博士人材はこう育つ 思い込みで優秀な人材を逃すと企業の命取り

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林氏は、PEPが目指す人材像を「『モノづくり』『コトづくり』『国際標準化』の各プロフェッショナル」と語る。「マテリアルとシステムの刷新、それらの社会への実装、そしてそれらを世界へ波及させるための国際標準化。未来の社会をデザインするには、こうした力が不可欠です。PEPでは、エネルギーマテリアル分野、電力システム分野、そして社会科学的分野を融合した教育を、国内13大学が連携して行います」(林氏)。

さらに特徴的なポイントとして、この13大学では共通の学籍を用意し、インターユニバーシティ型卓越大学院プラットフォームを形成する。具体的には、例えば九州大学の学生が選抜審査をクリアすると早稲田大学がPEP育成プログラム生としての学籍を付与し、九州大学で研究しながら早稲田大学のPEP育成プログラムを受講できるようになる。

しかし、日本全国に散らばる13大学からどうやって受講するのか。その答えはオンライン講義と演習合宿である。オンライン講義で基礎を学習したうえで、合宿に各大学の教授と学生が集結、演習を行い切磋琢磨するのだ。「ここで他大学の学生と交流することで、長期にわたる『人脈』を得られます。これは彼らの人生において、非常に大きな収穫となるでしょう」と林氏は力を込める。

また、電力計算の高度なノウハウを持つ電力中央研究所や産総研福島再生可能エネルギー研究所、JXTGエネルギーなどの各エネルギー企業、国内唯一の電気工学教育支援組織であるパワーアカデミーとも連携。学生が実際の現場に入って実習に参加し、最先端の技術やノウハウを学びつつ現場の人々と交流する機会を持つ。さらに海外大学や研究機関における3カ月間のインターンシップなど、まさに至れり尽くせりといった環境が用意されている。

優秀な博士人材の増加が、日本の産業を元気にする

PEPの学生は、13大学共通のカリキュラムポリシーに基づき、自らの専攻科目や早稲田大学に設置する科目を5年間で合計45単位履修する必要がある。そのための経済的な支援も手厚く、企業との共同研究の対価としてリサーチ・アシスタント費が支給されるほか、海外研究機関派遣に関する金銭的補助などもある。

「経済的な不安を取り除き、プロとしてしっかりと研究に集中できるようにするための施策」(林氏)だ。初年度の募集人員は20名で、別途社会人枠の募集が行われている。

「博士というとどうしても、自分の専門分野を追究し続ける"研究オタク"のようなイメージを持たれがちですが、実態はまったく異なります。われわれの研究室では他分野の研究者や企業と共同で研究プロジェクトを実施する機会も多くありますが、そこで各機関の調整や予算の執行をはじめとするプロジェクトマネジャーの役割を果たしているのが、まさに博士課程の学生です。博士号はいわば、研究者のグローバルパスポート。彼らを活用することは日本の産業界にとって大きな糧となります。企業にはぜひ、活躍の場を与えていただきたいと思います」と林氏は熱弁する。

英単語の「pep」には、「元気を与える」という意味がある。PEPで育った博士たちが課題解決能力を武器に、イノベーションで日本の産業を1つ上のステージへ引き上げ、ひいては世界を元気づけていく。そんな未来も近そうだ。