NO「研究オタク」、今どき博士人材はこう育つ 思い込みで優秀な人材を逃すと企業の命取り
全国13大学・海外6校ほか、
全体のまとめ役を担う早稲田大学
AI・IOTなどテクノロジーの急速な発展の一方、SDGsの実現や脱炭素化が求められている現代では、イノベーションによる課題解決や新産業創出が急務とされている。早稲田大学の「パワー・エネルギー・プロフェッショナル育成プログラム」(以下、PEP)はこうした時代の要請に応えるべく構築された、電力・エネルギー系の博士人材育成プログラム。
PEPのプログラムコーディネーターを務める同大学院の林泰弘氏(先進理工学研究科教授)は「PEPは全国の国公立大学と電力やガス、石油などエネルギー関係の大企業に加え、海外の有力大学や研究機関と連携した、これまでにない規模と厚みが第1の特長です」と胸を張る。
同大は、国内外におけるプラットフォーム全体を束ねる、いわば旗振り役も担っていることもあって、視座も高い。
「いわゆるSociety 5.0のコアとなる新産業創出を、さまざまな分野で主導する『知のプロフェッショナル』の輩出が目的。ひいては大学院教育改革の先駆モデルとなることを目指しています」(林氏)。
連携で生み出す「連鎖の価値」、文系のノウハウも
従来の典型的な大学院教育は、専門を深掘りするいわゆる縦割り型。しかし、未来のイノベーションと社会実装には分野を超越した連携が不可欠だ。例えば軽量な材料を用いて安全性の高い蓄電池を製造すれば、電気自動車(EV)の航続距離が長くなり、CO2削減に貢献する。
またそのEVを電気の供給や消費を最適に制御するシステムに接続すれば、余剰電力をためたり、不足分をほかから供給したりできるようになる。さらにこのシステムを国際標準化して世界に普及させることができれば、巨大なビジネスとなりうる……といった具合だ。
PEPはこうした潮流に沿い、また総合大学である早稲田大学の強みを生かして、異分野と一気通貫で研究開発を行う「連鎖の価値」を新たに生み出すプログラム。従来の大学院教育が持つ高度な専門性を生かしつつ、電力・エネルギー分野の新産業創出に資する人材を育成する仕組みが用意されている。