「預貯金照会業務」の劇的削減で変わる社会 税金負担や生活保護給付の公正担保にも貢献

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NTTデータでは2017年よりいち早く関係機関との勉強会を発足。中央省庁、地方自治体、銀行、生命保険会社の8庁4自治体、11行・社から課題の吸い上げを徹底的に行った。

これだけの団体が勉強会に集まったのは、これまでの公共分野・金融分野におけるシステム提供の実績があるからこそといえる。つぶさにそれぞれの様式の要望をくみながら統一フォーマット化を実現できた意義は大きい。もちろん誰もが扱えるよう、簡易な操作性にもこだわった。

実務検証を経て導入 新サービスの提供へ

18年8月からは、3自治体4部署、1銀行と信用金庫1行による実務検証も行われた。これは実際の業務の中で「pipitLINQ」を活用し、預貯金照会を行うというもの。実データを扱うため、セキュリティーへの配慮も本番さながらで行われた。回答期間および作業時間について、現状と電子化後を比較した結果、圧倒的な効果が表れたという。

これまで、数週間あるいは数カ月かかっていた回答が、翌日もしくは3日後には回答された。金融機関側の作業時間は61~99%の削減、行政機関でも29~55%を削減する結果となったのだ。

「預貯金照会業務の電子化は、関わる機関が横並びで始めなければ意味がないと言われてきました。確かに理想としてはそうなのですが、今回の実証実験に参加されたお客様からは、たとえ1行、1行政との連携だったとしても、作業の自動化やあまりに違う回答のスピードに、メリットは十分あるといった声をいただけました」(岩﨑氏)

19年7月からサービスを開始する「pipitLINQ」だが、山田氏は今回のサービス開始はあくまでもNTTデータが目指すデジタル・ガバメント実現の第一歩にほかならないという。

「『pipitLINQ』は、クラウドサービス『OpenCanvas※2』をシステム基盤としているため、今後の拡張も容易です。統一フォーマットについても、マイナンバーなどを視野に入れた設計となっています。今後参加省庁や団体、さらには連携データを拡大し、例えば煩雑な相続手続きをワンストップで行うなど、利用者の利便性を向上させるサービス提供につなげる計画です。今回のサービス開始を皮切りに、広く社会課題の解決を目指していきたいと考えています」

まだ第一歩を踏み出したばかりだというNTTデータの取り組みだが、社会を劇的に変える可能性を大いに秘めており、今後も目が離せない。

※2 NTTデータが提供する金融機関向けクラウドサービス