1966年生まれ。慶應義塾大学卒業後、銀行、証券会社にて資産運用助言業務に従事。95年、米イリノイ大学経営学修士号を取得(MBA)し、同年ソフトバンク入社。98年、モーニングスター設立に参画し、2004年より現職
著書 『怖がりの人ほど成功する! 丸投げ投資生活』(ナツメ社) 『ものすごく真っ当で、ありえないほど簡単な お金の増やし方』(幻冬舎) 『「つみたてNISA」はこの7本を買いなさい』(ダイヤモンド社) 『「iDeCo」で自分年金をつくる』(祥伝社新書) 『ものぐさ投資術』(PHPビジネス新書) 『マイナス金利にも負けない究極の分散投資術』(朝日新聞出版)など
フェイスブック https://www.facebook.com/tomoyaasakura
銀行窓販解禁の年にスタート。投資家が自ら情報を取得
1998年は投資信託(ファンド)市場にとって大きなトピックとなった年である。
「その年の12月にファンドの銀行窓口販売(窓販)が解禁になりました。当社は、その9カ月前の同年3月にジョイントベンチャーとして誕生しました。翌年の99年には第1回の『ファンド オブ ザ イヤー』を発表しました」とモーニングスター代表取締役社長の朝倉智也氏は振り返る。まだ当時は一般の個人投資家に、ファンドはもとより資産形成という概念さえ浸透していなかった。銀行窓販が解禁されても、富裕層の顧客が現物取引の株式売買などでなじみのある証券会社で購入するケースがほとんどだったのだ。
また、今では、個人投資家もインターネットでさまざまな情報を入手できるようになっているが、当時は金融機関と個人投資家の情報格差は圧倒的で、個人投資家がいい情報やいいファンドを見極めることは容易ではなかった。このため、販売会社の営業担当者にとって売りやすい商品や販売手数料が高い商品を勧められるままに購入してしまうといったことが頻発し、問題も生じていた。
「今でこそ、金融庁もフィデューシャリー・デューティー(顧客本位の業務運営)を金融機関に求めるようになってきましたが、創業当初から、私たちは『投資家主権の確立』を企業理念に、個人投資家が自ら情報を集め、自ら選択できるような環境が不可欠だと考え、その実現に向けた取り組みを進めてきました」
まさに時代の先を行く取り組みを率先して進めてきたのである。
ファンドの第三者評価機関として公正な情報を提供
銀行窓販解禁から20年を経て、ファンド市場は着実に成長してきた。「大きなきっかけとなったのが資産クラス(資産の種類・分類)の広がりです。ファンドの特長はさまざまな資産に分散投資ができることですが、20年前には投資対象は日本株ばかりでした。その後、資産クラスが海外の先進国や新興国の株式、債券、コモディティー(商品)、REITなどに広がり、さらに複数のファンドを組み合わせて運用するファンド・オブ・ファンズの設計なども可能になり、複数の国や地域、資産をまたいで分散投資できるように進化してきました」と朝倉氏は語る。
市場が広がる一方で、個人投資家にとっては新たな悩みも生まれてきた。現在、国内で販売されているファンドは約5300本にも上る。個人投資家が自身にとって最適な1本を選ぶのは容易ではない。
「当社は、『ファンドの第三者評価機関』として、公正な情報を提供しています。前述したようなさまざまな資産クラスごとに、ファンドをホテルやレストランの格付けのように、星の数で示しているのも大きな特長です」
「モーニングスターのファンド分類」は、国内の株式だけでも大型、中型、小型、さらに、運用スタイルもグロース、バリューなど79ものカテゴリーに分類されているので、同じカテゴリーのファンドが明確に比較できるようになっている。そのカテゴリー分類にしても、同社独自の判断基準に基づいていることに注目したい。例えば、ファンドの目論見書に「日本株」と示されていても、実際に債券の比率が高いファンドはバランスファンドに分類することもあるという。まさに、第三者の立場で投資家の判断に役立つ公正な情報を提供しているわけだ。
20年間の真摯な取り組みで信頼されるブランドへ
ファンド市場の黎明期に始まった「ファンド オブ ザ イヤー」も今年で20回目を迎えた。
この間には、リーマンショック、インターネットバブルの崩壊、東日本大震災などの危機もあった。

「リーマンショックのときには、ほとんどの資産クラスのファンドがマイナスパフォーマンスとなり、『賞を選ぶ意味があるのか』と言われたこともありました。しかし、厳しい環境下でも頑張っているファンドやファンドマネジャーを表彰することで、市場の活性化や投資家の資産形成の支援につながると考えて継続してきました」と力強く語る朝倉氏。
「ファンド オブ ザ イヤー」の分析方法が1年間の運用実績などの定量評価だけでなく、運用方針、運用プロセス、運用・調査体制や継続性、リスク管理体制、ディスクロージャーの状況など定性評価も考慮されているのもそのためだという。
「個人投資家の中には、『ファンド オブ ザ イヤー』の受賞をきっかけに、そのファンドを知ったという人も少なくありません。『受賞した商品なら買おう』と考える人にきちんと責任を果たさなければなりません」
過去の例では実際に、受賞ファンドに資金流入が拡大するケースがほとんどだ。個人投資家や販売会社の評価の高さもうかがえる。
「2018年の市場環境を振り返ると、好調だった前半に比べ後半は非常に厳しい年でした。この中でもプラスリターンを出すファンドもあるなど、まさにファンドマネジャーの力量を発揮した優れたファンド28本を選びました」と続けた。
今や「ファンド オブ ザ イヤー」はファンド市場のグローバルスタンダードに育ってきたと言ってもいいだろう。証券会社や銀行の営業担当者の中にも、投資家向けの商品アドバイスに同社のレーティングや「ファンド オブ ザ イヤー」の受賞などを重視する人が増えている。
「20年間続けてきたことがブランド構築につながったと感じています。その信頼に応え、これからも『ファンド オブ ザ イヤー』を継続していきたいと考えています」と朝倉氏は力を込める。
「投資家主権の確立」を目指す同社の取り組みは続いていく。