大改正に賢く備えて「攻め」の経営を 消費税10%時代を生き抜く企業へ
会計数値に基づいた経営の実現を
―10月1日から消費税率が10%に引き上げられます。企業が注意すべき点はありますか。
山田 2014年に税率が8%に引き上げられたとき、一部の取引については改正前の税率5%を適用する経過措置が取られました。経過措置は今回も同様です。例えば今年3月31日までの工事やソフトウェア開発などの請負契約、事務所やテナントなどの賃貸借契約は、引き渡しなどが10月1日以降でも税率は8%のまま。これまでも経過措置はありましたから、前回の経験者が社内にいれば、ノウハウを生かせるはずです。
問題は、新たに導入される仕組みへの対応です。具体的には「軽減税率制度」と「インボイス方式」の2つ。これらは企業の会計業務へのインパクトが大きく、早急な対応が求められます。
―「軽減税率制度」は一般企業も関係あるのでしょうか。
山田 飲食料品や新聞に適用される軽減税率は、食品業界や新聞業界だけに関係するものと捉えられがちですが、一般企業も無関係ではありません。
例えば会議や社内のパーティーで、一般企業でもお水やお茶など飲食料品を購入する機会は多いでしょう。これら経費で購入したものが軽減税率対象で8%なのか、それとも対象外で標準税率10%なのか。それを区分しないと、自社が納めるべき消費税額を計算できずに困ってしまいます。
しかも、区分しなければならないのは標準税率10%と軽減税率8%の2つだけではありません。同じ税率8%の中に経過措置の8%や、税率引き上げ前の標準税率8%もある。これら計4種類の税率を理解したうえで計算する必要があり、当面はドタバタが続くかもしれません。
―もう1つの新制度「インボイス方式」はどのようなものですか。
山田 国へ納める消費税は、「取引の中で預かった消費税」と「支払った消費税」の差額で計算します。このとき問題になるのが、仕入れや経費で支払った消費税は本当に正しいのか、支払先の個人や企業はきちんと税を納めているのか、ということです。その証明のため、支払いを受けた相手が請求書の形で発行する証明書をインボイス(適格請求書)といいます。