大改正に賢く備えて「攻め」の経営を 消費税10%時代を生き抜く企業へ

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今年10月、ついに消費税が10%に引き上げられる。飲食料品や新聞には、今回初めて軽減税率が導入される見込みだ。消費者からすると、生活の負担を軽くしてくれる軽減税率だが、企業視点でみると複雑で、多くの対応に迫られることになる。そんな消費税法の大改正に対し、企業はどのように備えればよいのか。ベストセラー『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』で知られる公認会計士・税理士の山田真哉氏に話を伺った。

会計数値に基づいた経営の実現を

―10月1日から消費税率が10%に引き上げられます。企業が注意すべき点はありますか。

山田 真哉
1976年兵庫県生まれ。99年大阪大学文学部史学科卒業。公認会計士・税理士。中央青山監査法人を経て、一般財団法人芸能文化会計財団の理事長に就任。主な著書に、160万部突破の『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』(光文社新書)、シリーズ100万部『女子大生会計士の事件簿』(角川文庫)

山田 2014年に税率が8%に引き上げられたとき、一部の取引については改正前の税率5%を適用する経過措置が取られました。経過措置は今回も同様です。例えば今年3月31日までの工事やソフトウェア開発などの請負契約、事務所やテナントなどの賃貸借契約は、引き渡しなどが10月1日以降でも税率は8%のまま。これまでも経過措置はありましたから、前回の経験者が社内にいれば、ノウハウを生かせるはずです。

問題は、新たに導入される仕組みへの対応です。具体的には「軽減税率制度」と「インボイス方式」の2つ。これらは企業の会計業務へのインパクトが大きく、早急な対応が求められます。

―「軽減税率制度」は一般企業も関係あるのでしょうか。

山田 飲食料品や新聞に適用される軽減税率は、食品業界や新聞業界だけに関係するものと捉えられがちですが、一般企業も無関係ではありません。

例えば会議や社内のパーティーで、一般企業でもお水やお茶など飲食料品を購入する機会は多いでしょう。これら経費で購入したものが軽減税率対象で8%なのか、それとも対象外で標準税率10%なのか。それを区分しないと、自社が納めるべき消費税額を計算できずに困ってしまいます。

しかも、区分しなければならないのは標準税率10%と軽減税率8%の2つだけではありません。同じ税率8%の中に経過措置の8%や、税率引き上げ前の標準税率8%もある。これら計4種類の税率を理解したうえで計算する必要があり、当面はドタバタが続くかもしれません。

―もう1つの新制度「インボイス方式」はどのようなものですか。

山田 国へ納める消費税は、「取引の中で預かった消費税」と「支払った消費税」の差額で計算します。このとき問題になるのが、仕入れや経費で支払った消費税は本当に正しいのか、支払先の個人や企業はきちんと税を納めているのか、ということです。その証明のため、支払いを受けた相手が請求書の形で発行する証明書をインボイス(適格請求書)といいます。

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