乱戦のフィンテック業界、生き残りの条件 ブレない思想を貫けないサービスは淘汰必至

拡大
縮小

―― 一方で、小規模の商店や飲食店などではまだ、キャッシュレス化やスマホ決済・送金サービスの導入が進んでいないようです。何がハードルになっているのでしょうか。

荻原 クレジットカードについては「加盟店手数料が高いため」とよく言われますが、それだけが理由ではないと考えています。というのも、仮に手数料が安価なサービスで「このタブレットがレジになります」とお店に渡したところで、使われない店では使われないからです。スマホを扱ったことがない人は、すぐにタブレット端末のレジにはなじめないでしょう。

しかし、最近ではだんだん70代以上の方でもスマホを持つようになり、家族やお孫さんとSNSでメッセージや写真のやり取りをする人も増えています。一度スマホを使うと「こんなに便利だったのか」と、なかなかガラケー(従来型携帯)には戻れません。あと2、3年はかかるかもしれませんが、社会全体が少しずつ変わっていくと思います。

社会を変革するようなサービスの登場に期待

―― 日本における送金・決済のプラットフォームが発展することで、ビジネスや消費のあり方も変化しそうです。

荻原 より簡単にお金のやり取りができたり、決済ができたりするようになることで、新たな人と人とのつながりも生まれます。私は「お金コミュニケーション」と呼んでいるのですが、例えば、寄付などでも少額を簡単に送ることができます。企業であれば頑張ったチームのメンバー全員にその場で金一封を出すといったこともできます。

むろん、法人間の送金でも、支払いサイト(支払いまでの期間)が短ければ取引先からの評価も高くなるでしょう。また、今後は副業も含めた多様な働き方をする人が増えると考えられますが、週払いや日払いで給与を支払う会社があれば歓迎されるでしょう。

―― 可能性がある一方で、決済・送金サービスが多すぎるという現状もあります。どのようなサービスが生き残ることになるのでしょうか。

荻原 生き残りを左右するのは、結局ユーザーに選ばれるかどうかです。そのためには、「人まねでない一貫性」が大切です。「キャッシュレス化は儲かるらしいな、うちも何かやれ」という発想では駄目ですね。

日本が抱える社会コストの課題は深刻です。さらには地方であれば、いかに人、モノ、カネを呼び込むかという課題があります。大切なのはこれらの課題に自分たちなりにどう向き合って、解決するためにどのようなサービスを提案するのかということです。ブレずに自分たちの思想を貫くことで必要なサービスや機能も見えてきます。世の中にないものをつくる、競合にないものをつねに意識することが、社会に変革を与えるサービスを生みだすための第一歩だと言えるでしょう。

関連ページ
セブン・ペイメントサービス
セブン銀行「ATM受取」が秘めた可能性