セブン銀行「ATM受取」が秘めた可能性 銀行口座不要で送金が可能に

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実際に、運送事業者と荷主をマッチングするサービスを提供するある企業は「ATM受取」を利用し、報酬を全国のセブン銀行のATMで受け取ることができるサービスを開始した。資金面で課題を抱えがちな中小運送事業者や個人のドライバーだけでなく人手不足の問題を抱える建設業、警備業などでもニーズが高そうだ。

「このほか、採用面接の際の交通費の支払いや、インターンシップの学生への報酬の支払いなどで、現金を用意したり、振込業務を行うのは大きな手間です。『ATM受取』は、さまざまなシーンで活用できます」と和田社長は加える。

また、シェアリングエコノミーの拡大も同社の躍進につながるかもしれない。

セブン・ペイメントサービス
営業部長
河邉 弦

「フリーマーケットアプリなどの利用が活発になっていますが、そこでも課題になるのが、アプリ登録時に口座情報の入力を求めると、サービスを使う前にやめてしまわれる方が一気に増えることです。『ATM受取』を利用すれば、口座情報入力がないため、ユーザー登録がスムーズに進み、ビジネスを拡大させることが可能です」(河邉部長)

新たなビジネスの創出に貢献

ATMで現金を受け取るサービスは、キャッシュレス化が進む現代では、時代に逆行していると感じる人がいるかもしれないが、それは早計だ。

和田社長は「労働に対する対価など、送金のニーズがなくなるわけではありません。セブン銀行のATMは、すでにセブン&アイの電子マネー『nanaco』、全国ほとんどの『交通系電子マネー』、『楽天Edy』にチャージ(入金)ができるほか、『LINE Pay』、『ソフトバンクカード』などの各種プリペイドカードにもチャージできます。『ATM受取』で受け取った現金を、ワンストップでこれらのマネーへチャージすることもでき、キャッシュレス化の進展にも寄与することができると自負しています」と語る。

河邉部長はさらに「海外の電子ウォレット会社とも提携を進めています。それにより訪日外国人のお客様が、日本各地で直接日本円を受け取ることができ、日本の交通系電子マネーにチャージするといったこともできるようになります。もちろん、今後の受け入れ拡大が予想される外国人労働者のニーズにも応えることができると考えています」と紹介する。

地方の商店では、スマホ決済はおろか、クレジットカードにも対応していないところもまだ多く、外国人旅行者が戸惑う場面もあるという。そんなシーンでもこのサービスは活用できそうだ。

和田社長は「今後はさらに電子決済などフィンテック企業のほか、さまざまな企業とこれまでにない新たなサービスを生み出せると考えています。その点で、まだまだ手つかずの市場であり、成長の余地は大きいと考えています」と力を込める。

今や、当たり前となったコンビニのATMも、もともとは利用者のニーズに向き合って誕生したサービスである。「ATM受取」も、さまざまな必要性に応じて進化し、そう遠くない未来には「なくてはならない」サービスになっていることだろう。