「昔は良かった」を語る経営者の落とし穴 過去の成功談には求心力がないと気づけるか

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――BPRの障壁は、やはり人に行きつくということでしょうか。

田中 はい。BPRへの認識が誤っていて「誰かがリストラされるのではないか」と不安を抱く労働者もいます。しかし、単に人員削減して組織をスリム化するのは、決してBPRの本質ではありません。そもそも日本企業は今、業種・業態によらず深刻な人手不足に苦しんでいる状態です。だからこそ、少ない人的リソースを有効活用するために、BPRは避けて通れない道なのです。

たとえばホワイトカラーの仕事については、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)によって効率化・自動化が進められるようになってきていますが、こちらも実際に効果を出していくためには、導入する人のモチベーションが何より重要です。

RPAというツールを使って、いかに多くの時間と手間をコア業務に割き、自分の仕事を楽しくできるか。そうした視点が必要になっているのです。

「良い無駄」と「悪い無駄」があることを認識すべき

――ただ、無駄の中にこそ、ノウハウが詰まっている、無駄をなくしてしまえば、むしろその企業独自の良さが消えてしまうと指摘する向きもあります。

田中 無駄をなくす、という一辺倒ではいけません。無駄には「良い無駄」と「悪い無駄」があるということに注意する必要がある。中には、イノベーションを起こすためにあえて無駄な時間をつくり、社員の自由な発想を仕事に生かそうと取り組んでいる企業もあります。まさにこれは「良い無駄」で、業務効率化を経てわざわざ生み出されたものです。

逆に「悪い無駄」とは、たとえば会議のためにと不要な資料をつくって自己満足を得ているような時間のことを指します。どちらかというとベンチャー企業よりも大企業で、こうした「悪い無駄」が今なおはびこっているように見えます。

――BPRを進めるため、経営層に求められるものとは何でしょうか。

田中 まずは、BPRの重要性をしっかりと認識してほしい。デジタル化、グローバル化の波が押し寄せる中、BPRは業種・業態によらず、どんな企業にとっても避けて通れないものだと考えてください。今取り組まなければ、将来生産性が落ち、企業全体が切羽詰まった状況に陥ってしまうでしょう。そして企業のトップとして具体的なビジョンを打ち出し、BPRにコミットメントしていくのだという強いメッセージを発信するべき。

そのためにも、過去の成功談ばかりではなくぜひ「失敗談」を語ってほしい。「昔は良かった」ではなく「昔は失敗したが、今ならもっと良くできる」という前向きな姿勢が求心力を高め、現場を動かします。

人手不足の中で企業間の競争は激化しており、一方で消費者の嗜好もめまぐるしいスピードで移り変わる時代です。中国の台頭もあり、古き良きビジネスのやり方ではもはや通用しなくなっているのです。今はBPRにもさまざまなツールが開発されており、導入コストも昔に比べてずっと低く抑えられています。

経営者がこうしたツールをうまく使いこなすことは、生き残っていく企業の第一条件。新たな付加価値を生み出して数十年、数百年と発展し続ける企業になるためにも、まずは業務の見直しから始めましょう。

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