
今の時代に求められる土地活用とは、具体的にどういったものだろうか。
ただ、資産を増やすだけでなく、「社会貢献」がポイントだという。
現代の資産形成について、相続コンサルティングをしている曽根恵子さんに話を伺った。
次代への資産継承になぜ生前の不動産対策が必要か
――生前にできる相続税対策として「不動産対策」を強く勧められていますが、その理由を教えてください。
相続コーディネーターの創始者として1万4000件以上の相続相談に対処。感情面、経済面に配慮したオーダーメード相続を提案。(株)夢相続代表取締役。
曽根 預貯金などの現金は額面がそのまま財産評価となりますが、不動産は活用次第で評価額が大きく下がります。例えば、何も建っていない更地の状態は評価が高く、相続税も当然高くなります。その土地に建物を建てて自宅にするだけでも節税効果がありますが、もっと評価が下げられるのが賃貸住宅を建てることです。人に貸している分は評価額が減額されるので節税効果がぐっと高まります。
――高齢の方のなかには現金で相続税が払えるのだからそれでいいだろうと考える方も多いです。
曽根 相続税が払えたとしてもせっかく節約して貯めた財産が大幅に減ってしまいますよね。実は事前に正当な対策をとると特例などで不動産評価は下げられますし、結果として基礎控除内で収まって相続税を払う必要がないケースも出てきます。こうしたことからも、不動産を活用して収益をうむ財産に組み替えることが必須の時代と言えます。
――相続税対策としての賃貸住宅建設が増えていますが、試算どおりの家賃がとれなかったり、空室が目立つなどトラブルも出ています。とくに初めて賃貸経営をする際の注意点を教えてください。
曽根 賃貸住宅は飽和状態ですから、所かまわず建ててもいい時代ではありません。賃貸住宅は駅から近いほど需要がありますから、駅徒歩10分以内が基本と言えます。エリアによってはもう少し遠くても成り立ちますが、それでも徒歩15分がぎりぎりです。それ以上離れたところに土地をお持ちであれば、保育園や高齢者向け施設など別の用途を考えたほうがいいでしょう。
――どんな賃貸住宅を建てるかも悩みどころです。
曽根 私たちがよくお伝えするのは、「ご自分たちが住みたくなるくらい愛着がわくものを建ててください」というアドバイス。どの世代のどんな価値観の人たちに暮らしてほしいのか、そのためにどんなデザイン・間取り・仕様にするのか。そして建物のネーミングも大事です。一つひとつこだわりがあるものを建てていただくとその気持ちは借り手の方に伝わりますし、大事にして住んでくれる人が集まってきます。
これまでは建築会社の提案のまま規格品のようなアパートを建てていたオーナーも多かったと思います。でもこれからの時代、同じやり方は通用しないと思います。オーナーの方に心していただきたいのは、事業の方向性、コンセプトなどをきちんと自らも考えたうえで、ひとつの事業を立ち上げるという自覚と意識を持って取り組んでいただきたい。例えそれが駅前の好立地でも同じことだと言えます。
――駅から距離のある土地の場合、打開策はありますか。
曽根 例えば車移動が中心の方をターゲットとしたガレージハウスなど、大多数ではないけれども確実にある需要を掘り起こすという方法もあります。とくに今は価値観もライフスタイルも多様化し、みんなが同じような暮らしをする時代ではなくなりました。
賃貸住宅=仮住まいという価値観も薄れ、敢えて買わずに積極的に賃貸住宅を選ぶ層も増えています。そういう方は賃料が割高でも快適に住めるところがいいと考えます。定番がない時代ですから、生き方も住み方も多種多様です。時代の空気や需要を汲み取って質のいい建物を建てていただきたいと思います。
――その意味ではパートナー選びも重要です。
曽根 これからの賃貸事業は間違いなく「どんな建物を作るか」が肝です。ですから今選ぶならば、柔軟に対応してもらえる会社がいいでしょう。その会社の姿勢だけでなく、実際の営業の担当の方も重要です。いい建物をつくろうという連帯感を持っているか、を重視してください。
建物にこだわるということは、規格住宅を大量に供給したほうがトクと考える会社からみると面倒と思うかもしれません。でも賃貸住宅だから安く簡単に建てていい時代ではありません。しかも建物は建ててしまうと30年、40年、50年と長い間存在するもの。その長い旅路を一緒に歩もうと思ってくれて、またメンテナンスやサポートもしっかりしている会社を選んでください。
将来を見据えた持続可能な資産形成へ
――相続対策という意味での注意点はありますか。
曽根 賃貸住宅は活用期間が長くなりますし、借入をする場合はお子さんの連帯保証が必要になりますから、ご本人だけじゃなくて次世代の意見、意思も大切にしてください。不動産も含めた全財産を把握し、現状の相続税、土地活用した場合の節税効果、引き継ぐお子さんの人数など、長期スパンで考えてください。現時点の損得しか考えないと、節税対策でスタートをしたつもりが家族の問題になったり、負債が負担になったり、問題にもなりかねません。
――供給過多と言われる現状の市況でも賃貸事業を始めるメリットは何でしょうか。
曽根 土地を活かして賃貸住宅経営を行うことは、利益を得るひとつの事業であると同時にひとつの社会貢献にもなる。もちろんいい建物を建てて維持するには費用もかかりますが、個人で住宅を供給し、住み手にも街の人にも感謝される。それが事業として成り立つということは自分たちの満足感につながると思います。そういう前向きな捉え方をしていただくと土地活用はとてもやりがいがあると思います。
土地を更地で維持できない時代になりましたので、財産は残すのでなく活用する。生活を切り詰めて貯めたお金で相続税を支払っても誰にもありがとうと言ってもらえません。だったら、きちんと対策をとって適正な節税をし、自分たちの暮らしの質を上げ、土地活用を楽しみながら社会貢献するほうがずっと有意義な財産の使い方ではないでしょうか。