社員が「主人公になる」職場創る経営の極意 人事担当必見!「職場変革」成功事例6選

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今年受賞した6企業に共通しているのは、特色豊かな施策を通じて「個」をエンパワーメントしていること。藤井氏によると、人材業界では近年、個を主人公とした職場づくりにますます注目が集まっているという。

リクルートキャリア
リクナビNEXT編集長
藤井薫

「その背景にあるのが、社会構造の変化です。1960〜80年代の日本は、良い商品を作れば売れる、いわば『確実な時代』でした。しかし、今の日本にはすでにさまざまなモノがそろっています。以前のようにはモノが売れず、何がヒットするか誰にも見通せない『不確実な時代』に入っています」

こうした社会構造の変化は、個人の働き方にも変化をもたらすという。「『確実な時代』には、組織が指揮命令の元で一律に行動することがそのまま競争力になるため、トップが指示を出して部下が従うピラミッド型が有効でした。しかし今のように変化のスピードが速い時代は、トップの指示を待っている時間はありません。一人ひとりが主人公となって判断し、仕事をデザインしていく必要があります」

企業の平均寿命は、個人の職業寿命より短い

スムーズに業務を進めるためにも、一人ひとりが判断力とパフォーマンス力を最大限に上げる必要がある。それがモノづくりからコトづくりへと生産の軸が変化した、現代の「プレースタイル」というわけだ。

「また、近年は会社と個人の”寿命の逆転現象”が起こっています。かつて企業の平均寿命は約60年と長かったのですが、現在は約20年ほどと言われている。一方、長寿化の中で80歳ころまで働き続けるニーズは高まっていますから、一つの企業に留まり続けることは難しい。だからこそ、自分が主人公であるという意識を持ち、プロフェッショナルとして成長し続けることが重要になってきています」

深刻化する人手不足に加え、以前のように終身雇用を保証できる企業は現実的に少なくなってゆく。企業側に今後求められるのは、従業員が職場を辞めた後も成長し続けられるような「終身成長支援」だという。個人のライフステージに合わせた仕事のギアチェンジも必要になる。

「これまでは、企業主体の労働文化に個人が合わせていましたが、今後は、一人ひとり異なる働き方のニーズを企業が吸い上げ、対応、支援していく姿勢が求められます。能力と対価の交換がメインだった個人と企業の関係から、企業と個人の双方が信頼を投げかけ合うような関係になるでしょう」

フォトグラファー・ヨシダナギ氏のトークセッションも

表彰式後の第二部では、トークセッションが行われた。ゲストに迎えられたのは、世界中の少数民族を撮影した作品で注目を集めるフォトグラファーのヨシダナギ氏だ。5歳の時にテレビでマサイ族を見て以来、アフリカに恋焦がれてきたという。「好きを力にする生き方とは」というセッションのテーマに対し、ヨシダ氏の口から「カメラが好きだと思ったことは1度もない」と衝撃発言が飛び出した。

フォトグラファー
ヨシダナギ氏

「報道されるアフリカのニュースは、内戦や貧困などの話題ばかり。私が憧れていたアフリカには違う側面もあると伝えたかっただけなんです。絵でも歌でもよかったのですが、ボタンを押せば映る写真がいちばん早いと思った。かっこいいアフリカを、私が感じたそのままに伝えるにはどうすればいいか考えるうちに、自然と行き着いたのがカメラです」(ヨシダ氏)。

率直に思いを語るヨシダ氏に対し、口を開いたのは守島氏。「ヨシダ氏は、自分の価値観を強く持っている人。そんなヨシダ氏が独自の価値基準を持つ少数民族の人々と出会い、コミュニケーションを成立させているのは象徴的なことですね」と話した。

トークショーではさらに、「働く個人が主人公になってイキイキ働ける職場を創るには」というテーマで意見が交わされた。若新氏は「既存の大きな組織を変えるのはやはり難しいですから、どこかを修正するよりも、いっそゼロから創り上げたほうがいい。例えば企業なら、本来のルールが適用されない出島のような部署を創り、新しいプロジェクトを立ち上げてみては」と指摘する。

アキレス氏は「職場はそこに参加する人が創り上げるもの。やりたいことを持つ人たちに、いかに活動の場を与えるかが大切なのでは」とアドバイス。「私がパーソナリティを務めるラジオ番組には、会社に関する悩みがよく寄せられますが、それを聞くたびに『職場とはなんて息苦しいんだろう』と思います。否定から入らず、まずは相手の長所を褒めることがコツでしょうか」(ヨシダ氏)。

最後に藤井氏が「今後は、好きを前面に出す職場や、個人のあるがままを生かす職場が出てくるかもしれません。来年のGOOD ACTIONでは自分と他者が混ざり合うような面白い働き方が登場するのでは」と展望を述べ、トークセッションを締めた。

職場ではどうしても、働く個人の思いや考えよりも、業務効率や利益が優先される。しかし「主人公は自分だ」と自分を主語に据えて仕事の文脈を紡ぐことで、職場は活性化するはず。その事実に多くの人が気づき始めた今、働く環境は今後さらに変化していくことだろう。