社員が「主人公になる」職場創る経営の極意 人事担当必見!「職場変革」成功事例6選

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「働く人が主人公となり、イキイキと働ける職場を創る」。リクルートキャリアが主催する「GOOD ACTION」は、そんな企業の取り組みを応援しようと始まったものだ。今年で5回目を数えるこのプロジェクト、今年も2月13日に東京・銀座にて受賞6企業の表彰式が行われた。職場と個人の関係を紡ぎ直すような、各社の独創的な施策の数々。いったいどのようなものなのか、それぞれの詳細を追った。

第5回「GOOD ACTIONアワード」では、学習院大学経済学部経営学科教授の守島基博氏、SAPジャパン バイスプレジデントのアキレス美知子氏、慶應義塾大学特任准教授の若新雄純氏、そしてリクナビNEXT編集長の藤井薫氏が審査員を務めた。「GOOD ACTION」賞を受賞した5社と、「Cheer Up」賞として取り上げられた1社を紹介していこう。

部長も同僚も、全員の給料が丸見えに

ISAO 代表取締役
中村圭志氏

まずは、ISAO(ITサービス、東京都台東区)は、役職・階層・部署・情報格差をすべて撤廃した「バリフラットモデル」というなんとも斬新な仕組みを構築した。「変化の激しいIT業界で重要なのはスピード感。組織を極力フラットにして、若手社員にも権限を委ねることが企業としての成長に不可欠だと考えました」と語るのは、同社代表取締役の中村圭志氏だ。

しかし何か判断を下すためには多かれ少なかれ情報が必要。そこで、給与情報から経営状態まで社内に存在するあらゆる情報を開示することを決定した。「情報格差がそのまま、社内の権力格差につながると考えました。20~60代と幅広い世代の社員がいますが、全員の意識と組織の改革を行い、たどり着いたのがバリフラットモデルだったんです」(中村氏)。

社員は皆、業務やキャリアの相談相手として「コーチ」を指名する。年下の社員をコーチにするケースもあるといい、世代の枠を超えて互いの長所を生かしながら支援・ケアしあっている好例だ。このバリフラットモデルの運用により、社員の自己規律が高まったほか、困難に直面している社員を周囲がスムーズにフォローできるようになった。

こっから代表社員
巴山雄史氏(右)

福岡県からの受賞となったのは、合同会社こっから(人材・組織開発、福岡県糸島市)。2016年創業、企業理念は心がワクワクする状態を表す”Playful”だ。年間予算1人15万円で自由に海外渡航できる制度「Playful Planet Quest」で今回の受賞に至った。

「遊ぶように仕事がしたいと、学生時代の仲間で会社を立ち上げてから早3年。ようやく、日の目を見ることができました」と、代表社員の巴山雄史氏は振り返る。「異国の地でこそ湧く新たな発想を大切にし、短期的な成果にはこだわらない」(巴山氏)という。来訪先の国での出会いがきっかけとなり、近年は海外案件も手がけるようになっている。

はるやまホールディングス
管理本部 執行役員
竹内愛二朗氏

1年で離職率を低下させたのが、はるやまホールディングス(紳士服および関連商品販売、岡山県岡山市)だ。退職する社員に退職理由をヒアリングすると「転職」「給与の不満」「転勤の不安」の3つが主であると判明。対応策として全従業員を対象とした「社内公募制度」、販売専門職としてキャリアアップを目指せる「スペシャリストコース」、働く地域を自ら選べる「総合職:地方限定コース」を新設した。

結果、2016年度に10.2%だった離職率が1年で8.8%まで低下。「匿名で率直な意見を募る社内目安箱制度を実施したところ、1週間で60件もの投稿がありました。厳しい意見も多いですが、これを元にさらに改善していこうと考えています」と、管理本部 執行役員の竹内愛二朗氏は決意を語る。

CaSy取締役 CHRO
白坂ゆき氏

現場スタッフの定着に励むのはCaSy(家事代行サービス、東京都品川区)だ。「現場スタッフに継続して働き続けてもらうことが、事業継続の第一歩。現場での業務終了後に書く日報に、33人の本部社員が返信する仕組みを敷いています。感謝と労いのメッセージを発信し続けることで、スタッフの満足度維持につなげています」(取締役、CHROの白坂ゆき氏)。

毎日1人で現場に向かい業務にあたるスタッフにとって、自分の努力が理解され認めてもらえるという実感が、孤独感の解消やモチベーション維持につながった。業界が人手不足にあえぐ中でキャストの定着率向上を実現、今では5000人ものスタッフを抱える規模に拡大した。

全員時短・全員主戦力!「時間対成果」だけを見る

ルバート代表取締役
谷平優美氏(右)

ルバート(イベント企画・運営、千葉県船橋市)は、現在10名の社員全員が育児中の時短社員。「以前は長時間労働の結果、疲弊して辞職する社員が続出。『社員を増やして、一人ひとりの負担を減らさなければ』と気づいたのです」と語るのは代表取締役の谷平優美氏だ。

まずは社員本人の希望によって月内稼働時間を定め、業務を可視化・細分化し、マニュアルをそろえた。残業せずに高い生産性を発揮すること、ジョブシェアにより急な休暇にも対応できる体制づくりである。さらに月に1度社長ミーティングを開き、社員にもアルバイトにも成長支援を実施。結果、業務効率も安定し、売り上げは1.5倍に伸びた。

MapleSystems
経営管理部 取締役 人事部長 CHRO
鴛海敬子氏(右)

「Cheer Up」賞に選出されたMapleSystems(技術者常駐型サービス、東京都中央区)は、「離職率100%」を目標に掲げる斬新な企業だ。さまざまな会社にエンジニアを派遣するSES(System Engineering Service)は一般に離職率が高い業界とされるが、それを逆手にとって、新たなスキルを求めるエンジニアのステップアップを応援するというスタンスを取る。

「エンジニアは自分が成長できる場を求めて職場を選び、2~3年で離職するケースもあります。そうした希望を引き止めるのはナンセンスですから、当社を”卒業”するという選択肢も応援します。『離職者100%』とは、エンジニアに対する究極の成長応援を表す言葉です」と、取締役人事部長CHROの鴛海敬子氏は力説する。社長が現役エンジニアという同社では、各エンジニアのレベルに合わせた業務提案も実施。結果、離職率は1割未満と逆に低く安定している。

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