日本の都市の国際競争力強化と都市輸出に向けて ~インフラPPPで未来の都市を創造する~
招待講演
官民連携による都市・インフラの構築
国土交通省の西脇隆俊氏は、中韓に比べて遅れている、港湾や首都圏環状道路の整備、高度成長期に年間約1万のペースで建設された橋梁等の老朽化対策が求められる一方、公共投資は96年から半分程度の水準に減っている現状を示し「PPP/PFI手法が必要になる素地がある」と述べた。国のアクションプランは、10年間で12兆円のPPP/PFI実施の目標を掲げ、官民連携インフラファンドも設立。大手町や新橋・虎ノ門地区などでの民間都市開発事業に併せた公共施設整備に加え、首都高速築地川区間の再生、関西・伊丹空港への運営権設定のように公共施設整備に民間の収益、活力を取り込む手法も探っている。また「海外の都市は、日本の経験を求めている」とアジア新興国、ロシアとの連携も進めている。「官民連携の法律・制度や資金支援はおおむね整っており、具体案件の掘り起こしが今後の課題。投資対象として支持される公的関与のシステムを作りたい」と語った。
パネルディスカッション
官民による未来都市の創造に向けて
パネルディスカッションは、東京都市大学教授の宮本和明氏、UR都市機構副理事長の内田要氏、日建設計副社長の安昌寿氏、日立製作所常務の川野薫氏が登壇。PwCの井上貴彦氏がモデレーターを務めた。
井上 皆さんに未来都市創造についての報告をお願いします。
宮本 バンコクでは渋滞対策に高架鉄道を建設したが、渋滞は改善しなかった。都市問題はインフラだけでは解決しない。総合計画が必要になる。
内田 URでは海外エコシティプロジェクト協議会などの事務局もしている。都市の輸出には、時間も技術も必要だが、URも貢献していく。
安 業種の異なる民間20数社が連携してドバイやロシアで都市問題ソリューションをビルトインした計画を提案。海外案件獲得に取り組んでいる。
川野 社会イノベーション事業としてITと社会インフラを組み合わせた提案をしている。英国都市間鉄道プロジェクトも進めている。
井上 世界各国で進む持続可能な都市づくりで、日本の強みと課題は?
内田 日本は法律、制度づくりの段階から新興国を支援。民間にも優れた技術があり、日本は有利だと思う。
川野 海外ではメーカーが、資金や事業運営のスキームも作らなければならない。英国には車両工場を設けるが、現地化も重要な課題だ。
井上 日本の都市の競争力強化の必要性と、官民の取り組み、課題は?
安 日本では木造密集地区解消など安全安心を大切にすべきだ。1969年からある都市再開発法は、よく整備された制度なので、活用してほしい。
井上 未来都市創造に向けたPPP・官民連携の課題とあり方は?
宮本 新しい事業方式が登場している。「競争的対話」も重視され、リスクを正しく理解、分担できれば、PPP/PFIの未来にプラスだ。
井上 皆様の話から、国内外の都市づくりに決まったビジネスモデルはないが、さまざまなシーズ(ビジネスの萌芽)があると感じました。
*各講演者様のご所属は、フォーラム開催日(2013年11月21日)
当時のものとなります。
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