世界に誇れる日本の自動車リサイクル制度 優れた仕組みで循環型社会の実現に貢献

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公益財団法人 自動車リサイクル促進センター
理事長 中村 崇 Takashi NAKAMURA
1949年生まれ。九州大学工学部冶金学科卒。同大学工学研究科修士、博士課程修了。九州工業大学教授、東北大学教授などを経て、2002年から2008年まで東北大学多元物質科学研究所資源変換再生センター長。現在、東北大学名誉教授、東京大学生産技術研究所特任教授。2018年6月より現職。

「自動車リサイクル制度」でリサイクルが進む 

─ 自動車リサイクル制度ができたのにはどのような背景があったのでしょうか。

中村 自動車リサイクル制度は2005年1月からスタートしました。それ以前も、国内のリサイクル事業者の取り組みにより、車のリサイクル率は80%と高い水準で進められてきました。しかし環境省が発表したデータによると、04年9月末時点で、不法投棄された車が約2万台、事業所などで不適切に保管された車が約20万台も発生していました。

かつて、"大量生産、大量消費"の時代には、その結果として生じる"大量廃棄"に注意を払ってきませんでした。しかし、00年ごろから"環境"という概念が人々の高い関心事となり、変化なしには経済活動や社会活動が成り立たなくなったのです。

─ 自動車リサイクルをうまく機能させるための課題はどのような点だったのでしょうか。また、その課題を解決するための仕組みは。

中村 適正なリサイクルの妨げとなっていたのが「シュレッダーダスト(有用な部品や資源などを回収した後に残る樹脂やゴムなどのゴミ)」、地球温暖化に影響を与える「フロン類(カーエアコン用冷媒)」、処理に専門的な技術を要する「エアバッグ類(エアバッグやシートベルト)」です。

そこで02年7月に、使用済自動車の再資源化等に関する法律(通称「自動車リサイクル法」)が制定され、05年1月に施行されました。それにより、「シュレッダーダスト」「フロン類」「エアバッグ類」の3物品の適正処理に必要な費用を可視化した上で、リサイクル料金として、ユーザーが車を購入する際に前払いで負担していただくことになりました。

─ 自動車リサイクルが始まり、どのような効果が上がっているのでしょうか。

中村 まず、不法投棄などが大幅に減りました。04年9月末時点で約22万台発生していた不法投棄などが、18年3月末時点で約5000台にまで減少しています。また、車の適正なリサイクルの阻害要因がなくなったことで、車の部品や素材などのほとんどがリサイクルされるようになりました。中でもシュレッダーダストのリサイクル率は約98%に達しており、15年度の目標値である70%を大きく上回っています。

ユーザーをはじめ、自動車メーカー、破砕業者、解体業者、フロン類回収業者など、あらゆる関係者が、それぞれ役割を分担して、循環社会の構築に向けて車のリサイクルを進めた結果です。

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