知らないでは済まない「説得の学問」の心得 あなたの会社も、落とし穴にはまるかも?
椎橋 物流業界では、交通事故発生0を目指してどんなに入念に対策を講じても、相手があることなので、100%無くすことはできません。ヒヤリ・ハットの事例を数多く集めて全国のドライバーに共有し、事故を防ぐことが不可欠です。また。万が一の時に紛争に発展しないよう、契約書に条項を入れておくなどして現場を支えています。
大岩 私の業務は、クライアントとの契約に関する業務がメイン。気になった点を営業担当に指摘すると「慣例があるからこのままで良いのです」とつっぱねられることも。しかしたった1件のトラブルでも、自社のリスクにつながると思えば見逃せませんし、いずれ大問題に発展すると考えて対処しています。しかし、ただ、あまりリスクばかり強調するのも考えもの。保守的になりすぎると、せっかくのビジネスチャンスを生かせない可能性があるからです。自社の利益最大化に向けて、適切な調整方法を提案するのが一番の目的ですね。
遠藤 紛争を未然に防ぐ「予防法務」の考え方は以前から指摘されていますが、それを戦略として積極的に取り込むことで、企業の価値を高めることができます。
根本 私の尊敬する上司がよく「左手にそろばん、右手に六法」と口にするのですが、金融の仕事では、財務知識と同じく法務の知識を磨いておくことが重要です。取引もグローバル化・多様化する中、法律の知識やセンスがないと、注意を払うべき契約の落とし穴に気づくことができません。法を学ぶことで潜在的なリスクに気づき、事前に潰すことができるのは強みになりますね。
法的な「センス」が自分を助ける
遠藤 法学を学ぶことには、2つの意味があります。一つは知識をそのままダイレクトに生かせること。もう一つは、新しい事象に対応できる法的なセンスが養われること。法の知識は汎用性がありますから、そのベースを元に、場面が変わっても自分なりの解釈ができるようになります。
椎橋 はい、それは常々実感します。「おおよそここを見れば疑問を解消できる」という方向感覚が養われましたし、何かを調べたい時は「こう調べればわかるだろう」と、道筋がわかるようになりました。
根本 私はレポートを書くことで、論理的に考え説明する力が培われました。プレゼン能力も向上したと感じます。中央大学には「實地應用ノ素ヲ養フ」という建学の精神がありますが、これからも学んだことを実務に応用していきたいですね。
大岩 論理的に考える力が鍛えられると、人に何か説明する際、理解してもらいやすくなりますよね。私も、法務担当である限りさまざまな形で法学を学び続け、社内の法務体制をさらに作り上げていきたいと思っています。
遠藤 学問と実務の現場には、少なからず乖離もあるでしょう。判例とまったく同じケースがご自分の職場で起こるとは限りません。けれど、法学を学ぶことで身につく「汎用性のある思考力」は必ず実務に生かせます。法学は大人の学問であり、説得の学問であり、正義と公平の学問です。本学で学んだことを、ぜひ皆さんのフィールドで生かしていただけたらと思います。