問題は「スマホを使わせるか否か」ではない デジタルネイティブの子どもには適切な利用を
内閣府の「青少年のインターネット利用環境実態調査」によると、2017年度の青少年のインターネット利用率は82.5%。ウィンドウズ95の発売をデジタル化の起点とすると約4半世紀、初代iPhone登場から約12年で、インターネットの普及はここまで進んだのだ。
このまま、デジタル技術の進展が加速度的に進めば、AIやIoTをはじめとする最新のデジタル技術が一般化し、身の回りがすべてデジタルで囲まれる時代が訪れるかもしれない。そのような時代に備えて私たちがすべきことについて、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授の中村伊知哉氏は次のように語る。
「自動車や家電はすべてIoTでつながり、デジタル機器はウェアラブルコンピューターの方向にシフトしていくと考えられます。つまり、人間は生まれた瞬間、ベッドの上からずっとデジタル生活を送るようになるのです。いまだ、子どもにスマホやタブレットを使わせるべきか否かという議論がありますが、もはや『使わせるか、使わせないか』ではなく、『まずは使ってみる』時期に来ているのです。デジタルに囲まれて急速に変わっていく世界の中に身を置き、暮らしやビジネスがどう変化していくのかを考え、対応していく段階に入っているのです」
教育現場でも加速するデジタル化
今春に施行される改正学校教育法によって、小中高の授業では、これまでの紙の教科書と併せてデジタル教科書が使えるようになる。また、20年度からは小学校でのプログラミング教育が必修化される。教育現場におけるデジタル化が加速する背景には、「これから生きるうえで必要なのは、ICTに対応する力」であるとの認識がある。これは日本の文部科学省のみならず、OECD(経済協力開発機構)をはじめ、先進諸国における共通認識だ。
では、デジタルネイティブ世代の子どもたちに、どのようにデジタルリテラシーを身に付けさせればよいのだろうか。
「デジタル機器を使って情報を受け取るだけではなく、音楽や映像、ゲームなどを『作る』ことを通じて身に付けるのがいいでしょう。プログラミングでロボットを動かすことでもいいんです。子どもたちが夢中になり、楽しんで取り組めるかどうかが重要なのです。そのための環境を整えてあげれば、デジタルリテラシーはもとより、必要な知識を調べる方法や社会性などを自然と身に付けていくでしょう。先生が生徒に教えるという従来の教育方法も、デジタル化で大きく変わり、学校はみんなで作ることを通じて考えたり、話し合ったりする場になっていくはずです」
これからの時代に求められる人材は、「デジタルを活用し新しい価値を生み出す人、そして変化を楽しめる人」(中村氏)だという。そのような人材を育成するうえでも、「作る」教育がカギとなる。子どもが新しい教育を受け、どんどん先に進んでいくと、問題はむしろ大人のリテラシーの低さになっていくだろう。