インフレ時代の有力なリスクヘッジ手段となる
J‐REIT
インフレ政策に対応した
ポートフォリオの切り替えが必要
アベノミクスによって、資産運用を取り巻く環境は大きく変わった。
デフレ経済は「キャッシュ・イズ・キング」の時代だが、インフレが進めば、物価上昇率に反比例して現金資産の価値が目減りする。現在、1590兆円と言われる個人金融資産の54%は現預金で占められているが、インフレ政策が実現した時、すべての資産を現預金のみで保有していたら、資産価値は間違いなく目減りする。すでに国は、政策としてインフレ実現を掲げているのだから、少しずつでもよいので、インフレ対応型のポートフォリオに切り替えていく必要があるだろう。
では、具体的にどうポートフォリオを切り替えていけばよいのか。
答えは、インフレに強い資産を組み入れること。その代表格が不動産である。
しかし、不動産の直接購入は、資金的にハードルが高く、いざ現金化しようとした場合の流動性に問題がある。そこで注目したいのが、J‐REIT(不動産投資信託)を通じての不動産投資だ。
J‐REITは、不動産を組み入れて運用される投資信託の一種で、正式には「投資法人」に分類される。つまり不動産投資を専門に行っている法人が発行する投資証券が上場され、投資家はそれを売買する。その意味で、投資信託と株式の中間的な存在といってもよい。現在、東京証券取引所のJ‐REIT市場には、43本のJ ‐REITが上場されており、大勢の投資家によって売買されている。
東証J‐REIT市場全体の価格動向を示す「東証REIT指数」は、アベノミクス前夜の昨年12月、1050ポイント前後で低迷していたが、その後は順調に上昇を続け、今年11月26日時点の終値は1443ポイント。この1年間で40%近く上昇した。日銀によるJ‐REITの買入政策に加え、年2%のインフレ目標を掲げたアベノミクスなどが、価格の押し上げ要因だ。
安定した分配金収入こそJ‐REIT投資の真骨頂
J‐REITの魅力は、値上がり益期待だけではない。安定した分配金収入にこそ、J‐REIT投資の真骨頂がある。11月26日時点におけるJ‐REIT全銘柄の分配金利回りは、平均で3.81%だ。もちろん銘柄によって差はあるが、東証1部上場全銘柄の配当利回りである1.5%、10年物国債利回り(長期金利)の0.6%と比べると、明らかに高い。来年1月からスタートするNISA(少額投資非課税制度)を活用して、安定的に支払われる分配金を非課税で受け取るという方法もある。
また高い分配金利回りは、J‐REITの価格変動リスクをヘッジする効果をもたらす。投資したファンドの価格が下落しても、長期保有することで、受け取った分配金の累積額が損失額をカバーできるのだ。高い分配金を、価格変動リスクに対する保険代わりにして、なおかつ値上がり益も狙えるミドルリスク・ミドルリターン商品の典型といってもよいだろう。