
共催:東洋経済新報社 エプソン販売
オープニング
CSR企業総覧 編集長
岸本 吉浩
東洋経済新報社の岸本吉浩・CSR企業総覧編集長は「CSR、サステナビリティ活動の目的に社会課題の解決を掲げる流れになっている」と最近の傾向について語った。企業が課題を選ぶ際の指針として「ESGとSDGsは重要なキーワード」と説明。「対話を通じて、それぞれの会社に合った取り組みを見つけていただきたい」と参加者に呼びかけた。
基調講演I(ESG)
ESG/SDGs時代のCSR経営
‐企業が社会課題の解決を目指すには
経営学研究科 教授
國部 克彦氏
CSR経営が専門の神戸大学、國部克彦氏は、格差拡大などの社会的課題を引き起こすグローバル経済の行き過ぎに、保護主義で対抗する流れの一方で「サステナビリティで制御しよう」とする国際社会の方向性があると指摘。政府が担ってきた社会的課題解決の一部を、企業に任せるEUの政策にCSRが原点にあり「何をするかは企業の自主性に委ねられるが、取り組むこと自体は義務になっている」とCSRの背景を説明した。この流れは、国境を越えるESG投資の後押しを受けて、コンプライアンスから社会的価値創造へと発展。企業は、利益を追求する事業活動の結果として社会課題を解決するという考えで、既存の活動の意義をSDGs目標に分類・発信するにとどまらず、より積極的に「社会課題を解決し、社会的価値を創造した結果として中長期的収益につなげる」ことを目指し、「通常のビジネスの範囲を超えた追加的行動も必要になる」と強調した。その実践には、社員が自発的に会社の外部にある課題を発見し、解決する「アウトサイドイン」の取り組みが必要で、これが「社会的価値を創造する事業機会を広げることにつながる」と語った。
基調講演II
ESG時代のSDGs活用による価値創造経営
CSR/SDGsコンサルタント
グローバルビジネス学会理事
笹谷 秀光氏
伊藤園の笹谷秀光氏は、SDGsが目指す持続可能性は「世のため、人のため、子孫のためという世代軸を取り入れた概念」と定義。世界遺産の合掌造り集落のかやぶき屋根のふき替えを共同で行う結(ゆい)を例に挙げて「日本の伝統を後世に伝える取り組みの中にはSDGsに通じるものがある」と述べた。SDGsが採択され、日本版スチュワードシップコードの適用が開始されて以降、大手企業とのビジネスや、国際的な議論の場では、持続可能性を抜きには話ができない「SDGsの主流化」が加速。SDGsは、企業価値向上に不可欠となると同時に、その取り組みが持つ社会的意義が従業員のモチベーションを向上させ「社内外のブランディング手段として重要性を増している」と語った。また、SDGsが、新たなテクノロジーを取り入れてイノベーションを創出し、社会的課題を解決しようと国が提唱する「ソサエティ5・0(超スマート社会)」とも、目的を共有できるとした笹谷氏は、まちづくりや、次世代教育などの視点も加え、SDGsの目標年の2030年に向けた企業の取り組みに期待を示し「今日すぐにも始めるべきです」と訴えた。
基調講演III(統合レポート)
情報開示の新たな役割
‐イノベーションへの予兆の意味共有化を求めて
国際マネジメント研究科 教授
北川 哲雄氏
青山学院大学の北川哲雄氏は、財務情報にESG情報を組み合わせて投資判断するESGインテグレーションや、ESGと事業戦略について投資先企業と対話するエンゲージメントなど、ESGに関与を強める海外機関投資家の動きに言及。中長期視点の経営をしたい企業にとって望ましい株主は、長期、ESG、パッシブの投資家や、PRI(国連の責任投資原則)、スチュワードシップコードに署名した投資家など、ESGに理解のある投資家であり「企業は株主を積極的に選ぶべき」と強調した。それには、しっかりしたガバナンスの確立が大前提で、取締役会議長とCEOが分離されず、一定数の独立社外取締役の選任が進まないなど、取締役会のガバナンスの仕組みが整っていない多くの日本企業の現状では「信用は得られない」と断じた。また、統合報告も、企業のイノベーション能力を求める長期投資家に向けたものにすべきと指摘。報告では、企業の土台となる企業哲学・文化から真剣に訴求する重要性に触れて「見やすくコンパクトにするより、長くてもファクトを押さえたほうが、ディテールを望む投資家には評価される」と語った。
ディスカッション
ESG・SDGs時代における「企業価値向上」と「イノベーション」の実践
最後に岸本編集長の司会で、企業のSDGs担当者が議論した。
事業戦略部 CSR室 マネージャー
嶋田 浩生氏
東京海上の嶋田浩生氏は、同社のCSRについて「安全・安心、地球を守る、人を支えるをテーマに全社員参加型で推進し、収益にもつながればと考えている」と説明。産学連携の防災、顧客参加の植林、歩数に応じた還付金のある保険などを紹介。SDGsによって「グローバルに顧客、取引先と夢を共有できる。よい社会づくりへ皆さんと連携したい」と述べた。
経営企画部業務室 次長
高堰 博英氏
三井物産の高堰博英氏は「欧米発でゲームチェンジが始まり、企業価値の基準が変わってきた」と述べ、サーモンの陸上養殖など持続可能な農林水産業に向けた自社の取り組みに言及。「社会にとっての意義と、会社にとっての意義の両立を長期の視点で目指すことが求められ、SDGsという世界共通言語を使い実現する」ことが、グローバルに事業展開するうえで重要という認識を示した。
経営企画部長
稲継 明宏氏
ブリヂストンの稲継明宏氏は、モビリティ、一人ひとりの生活、環境の各重点領域で、自社の強みを生かして社会課題解決に貢献する同社グローバルCSR体系を紹介。パンク後も一定距離を走行できるランフラットタイヤの価値を、ターゲット3・6の交通事故死傷者半減にリンクさせ「SDGsで、どの社会課題を解決するか、をわかりやすく説明できるようになった」と話した。
笹谷氏は「パートナーシップで目標達成を目指し、日本のよさを発揮しましょう」と呼びかけた。

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