IT経営戦略フォーラム イノベーションの世紀を切り拓き、グローバル競争を勝ち抜くビジネス基盤構築とクラウド戦略の実践
特別講演Ⅱ
21世紀の経営と時代が求める革新型リーダーとは
次に登壇した林野宏氏はユーモアたっぷりの口調で会場を沸かせながら、独自の考え方を披露し、示唆に富んだ内容となった。
林野氏はまず、21世紀はアジアの世紀だと明言、とりわけASEANのポテンシャルが高いと指摘。日本は地理的に有利であり、ASEAN中心に行くべきだとした。
そして、これからは感性創造経済の時代になり、知的感性の力が最も重要になると提言。そこでは時代・社会・人々の心の変化を察知し、新たな価値を創造できる人こそ主役になる。だが、日本人は知的感性に欠け、非連続的な変化によって価値を創造するイノベーションが少ないと喝破した。イノベーションの本質は潜在需要の顕在化であり、思いついたら実行する勇気が大切。同時にクリエイティビティ=特殊な才能ではなく、個人が人生の中で獲得し発展させていくことが不可欠と説いた。
そのうえで今の時代に求められるリーダーは、ビジネス感度の高いプロフェッショナルとし、BQ(ビジネス感度=IQ(知性)×EQ(理性)×SQ(感性)を掛け合わせて示す能力指標)、夢中力など新たな概念を提起。能力とは、目標に向かって努力する情熱の持続力であり、仕事でも遊びでも夢中になることが大切と結んで講演を終えた。
事例講演
事例に学ぶ、ビジネスに革新をもたらすITとの付き合い方
事例講演ではまず金子直裕氏が、経営・業務・ITの融合による企業価値の最大化を目指すのが、IT経営であることを確認。会社として実現したいことを定め、実現するための選択肢としてIT化を検討すべきとした。
この後、入江仁之氏が、ITの投資は組織の改革の後に行うべきと指摘し、トヨタでは非付加価値業務を見直し、自らが考える組織へと改革を断行した結果、労働生産性が18%向上。パナソニックでも33%の労働生産性向上を実現。改革には顧客視点によるシンプルな行動規範をつくり、仕事の進め方をPDCAに変わる米国軍の戦略遂行法OODAに基づき見直すことを薦めた。
続いてダニエル・ハンソン氏は、海外の金融サービス会社の場合、IT基盤を共有仮想化環境へ移行したことで、七つのデータセンターを二つに統合、4000台のサーバを300台に減らすなどの成果を上げたこと。ネットアップ社自身も新しい分散処理のプラットフォームを導入、ビッグデータの活用が可能になったことで、サービスやアプリの開発などの成果が上がっていると報告した。
最後に再び金子氏が登壇し、ITを戦略的な道具として使いこなすには、経営や業務とITの壁を乗り越える人材を育てることが重要と指摘。「私たちの役割は、皆様の実現したいことを、最適なテクノロジーとノウハウ、そして人材をもって具現化することです」と結んで、フォーラムは終了した。