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IT経営戦略フォーラム

  • 制作:東洋経済企画広告制作チーム
10月29日、東京・千代田区で「IT経営戦略フォーラム」が開かれた。円安や株高を背景に、企業はIT投資を再開。一方でITはクラウド化の潮流が大きくなりつつある。そうした中、グローバル競争を勝ち抜くためには何が必要か。主催者を代表して東洋経済新報社の山縣裕一郎代表取締役社長が「ITがもたらす経営の新しい可能性をこのフォーラムで探ってほしい」と挨拶。識者や専門家、企業経営者などが、さまざまな切り口から講演を行った。
主催 東洋経済新報社
協賛 伊藤忠テクノソリューションズ

基調講演
アベノミクスバブル

慶應義塾大学ビジネススクール
准教授
小幡 績 氏

慶應義塾大学ビジネススクールの小幡績氏は、「アベノミクスバブル」と題した講演で、アベノミクスに対する批判を展開した。昨年夏に世界経済が底を打ち、景気はいい循環に入っていた。そこにアベノミクスが金融を緩和し、財政も出動させたので株高や円安を招き景気は回復基調だが、ショック療法的な効果でしかない。足元の経済のよさは実力以上であり、日本経済が根本的に変わったわけではなく、現下の政策ではこれ以上よくなることはないというのが、小幡氏の主張だ。

そして、日本企業は収益の多くを海外であげるようになっているから、グローバルポートフォリオを築くときに円安ではコストが割高になってしまう。アベノミクスは株価の萎縮均衡を打破したが、今の株式市場はファンダメンタルズで説明できないバブルであり、持続可能性はないと、独自の論理を展開した。

一方で小幡氏は、日本経済の見通しについて「非常に前向き。グローバル化がいっそう進み、雇用がうまく回り始めればさらによくなる可能性もある。日本企業はいいもの、いいサービスをつくる潜在力は高い」と楽観的であることを示し、日本経済は企業の努力に負うところが大きいとの認識を示した。

特別講演Ⅰ
ITで変革を起こすビジネス基盤

伊藤忠テクノソリューションズ
常務執行役員
クロスファンクショングループ担当役員
兼 CTO
大久保 忠崇 氏

米国ではコンピューティングがユーティリティ化しており、企業がSNSなどを活用し、コミュニケーションの手段が変化している。アイデアを出してくれる若い人の活用法が、企業の力として注目されている。大久保忠崇氏は、数千人のコミュニティのなかでアイデアを出し合ってソフトウエアをつくっていくOSS(オープン・ソース・ソフトウエア)の仕組みを示した。この仕組みを応用し、パブリックコメントを募集して政策づくりに反映させているケースを例示、企業の組織のあり方の一つとして考えられてもいいのではないかと指摘した。企業経営にコミュニティを活用すると、よりよいものが短時間で実現できるのではないかと提言した。

またこうした仕組みは、社員のアイデアをうまく吸い上げることで、問題が一気に解決する。コンピュータの障害発生時などに実際にそういう方法をとっている。組織を超えてみんなで考えたほうが、よりよい考えが早く集まる。アメリカでは企業内コミュニティをつくるプラットフォームもあることを紹介した。

特別講演Ⅱ
21世紀の経営と時代が求める革新型リーダーとは

クレディセゾン
代表取締役社長
林野 宏 氏

次に登壇した林野宏氏はユーモアたっぷりの口調で会場を沸かせながら、独自の考え方を披露し、示唆に富んだ内容となった。

林野氏はまず、21世紀はアジアの世紀だと明言、とりわけASEANのポテンシャルが高いと指摘。日本は地理的に有利であり、ASEAN中心に行くべきだとした。

そして、これからは感性創造経済の時代になり、知的感性の力が最も重要になると提言。そこでは時代・社会・人々の心の変化を察知し、新たな価値を創造できる人こそ主役になる。だが、日本人は知的感性に欠け、非連続的な変化によって価値を創造するイノベーションが少ないと喝破した。イノベーションの本質は潜在需要の顕在化であり、思いついたら実行する勇気が大切。同時にクリエイティビティ=特殊な才能ではなく、個人が人生の中で獲得し発展させていくことが不可欠と説いた。

そのうえで今の時代に求められるリーダーは、ビジネス感度の高いプロフェッショナルとし、BQ(ビジネス感度=IQ(知性)×EQ(理性)×SQ(感性)を掛け合わせて示す能力指標)、夢中力など新たな概念を提起。能力とは、目標に向かって努力する情熱の持続力であり、仕事でも遊びでも夢中になることが大切と結んで講演を終えた。

事例講演
事例に学ぶ、ビジネスに革新をもたらすITとの付き合い方

シスコシステムズ室長
専務執行役員(当時)
入江 仁之 氏
伊藤忠テクノソリューションズ
ITエンジニアリング室長
金子 直裕 氏

事例講演ではまず金子直裕氏が、経営・業務・ITの融合による企業価値の最大化を目指すのが、IT経営であることを確認。会社として実現したいことを定め、実現するための選択肢としてIT化を検討すべきとした。

この後、入江仁之氏が、ITの投資は組織の改革の後に行うべきと指摘し、トヨタでは非付加価値業務を見直し、自らが考える組織へと改革を断行した結果、労働生産性が18%向上。パナソニックでも33%の労働生産性向上を実現。改革には顧客視点によるシンプルな行動規範をつくり、仕事の進め方をPDCAに変わる米国軍の戦略遂行法OODAに基づき見直すことを薦めた。

ネットアップ
マーケティング本部 本部長
ダニエル・ハンソン 氏

続いてダニエル・ハンソン氏は、海外の金融サービス会社の場合、IT基盤を共有仮想化環境へ移行したことで、七つのデータセンターを二つに統合、4000台のサーバを300台に減らすなどの成果を上げたこと。ネットアップ社自身も新しい分散処理のプラットフォームを導入、ビッグデータの活用が可能になったことで、サービスやアプリの開発などの成果が上がっていると報告した。

最後に再び金子氏が登壇し、ITを戦略的な道具として使いこなすには、経営や業務とITの壁を乗り越える人材を育てることが重要と指摘。「私たちの役割は、皆様の実現したいことを、最適なテクノロジーとノウハウ、そして人材をもって具現化することです」と結んで、フォーラムは終了した。