社会人が学ぶべき、ももクロの非常識哲学 現代社会で「朝令暮改」は是である!

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そんな難題を乗り越える原動力になったのが、いわゆる「朝令暮改」である。

マネジメントの意向が昨日と今日とでは180度、変わってしまっていることも多々ある……というのがももクロ現場の特徴だ。その判断基準は明確で「昨日までは面白いと思ったけれども、今日、面白くならないと感じたら、迷わずに前言を撤回する」というもの。イベントの企画を準備してきても、いざ会場に入って「この空間でやってもウケない」と感じたら、これまでのリハーサルや用意してきた小道具などがすべて無駄になってしまっても、即断即決で「やらない」となる。

これは観客のことを考えたら当たり前のことで、「面白くならないとわかっているものを、お客さんに提供するのは失礼だ」という“観客ファースト”の精神を遵守しているだけのこと。とはいえ、その当たり前のことがなかなかできないのが現実だ。

ではなぜ、ももクロの現場ではそれが可能なのか?

それはプロデューサーの川上アキラが、常に現場に出ており、トップダウンで判断することができるから。肩書きこそプロデューサーだが、やっていることは現場マネージャーそのもの。一旦、社に持ち帰って検討する必要もなく、その場で瞬時にGOもNGも出せる。現代のスピード社会においてこれは非常に重要だ。

「観客ファースト」のための決断

当初はメンバーも「昨日と今日とで言っていることが違うじゃん!」と不満を漏らしていたが、今では“観客ファースト”のための決断であることを理解しているから、これまでの準備がすべて無駄になろうとも納得して従うようになった。メンバーが納得すれば、応援しているファンもそれを受け入れる。このようにしてメンバーとファン、運営とファン、マネジメントとメンバーの理想的な関係が築かれていった。この盤石な関係性も長く人気が持続する大きな要因。朝令暮改は「掌返しだ」と叩かれがちだが、そこに確固たる理念があれば、それすらも「是」になるのだ。

ちなみに筆者はもともとベースボール・マガジン社に勤めるサラリーマンだった。のちに『スカパー!』の立ち上げ時には、三井物産の子会社に籍を置いていたこともある。それだけに、常識的なラインで仕事をすることも当然、念頭に置いて動いてはいるのだが、幸か不幸か、筆者が『週刊プロレス』で記者として働いていた時代は、稀代のカリスマ編集長・ターザン山本氏の黄金時代。毎週のように「朝令暮改」と「掌返し」に振り回されつつ、それをプラスにひっくり返す作業に追われていたので、ももクロの「非常識ビジネス」を心地良く受け入れることができるのかもしれない。

今回、執筆した『ももクロ非常識ビジネス学 アイドル界の常識を覆した47の哲学』には、彼女たちが体現してきた実例を47ケースも収録した。「たかだかアイドルの話じゃないか」と高を括っている方もいるかと思うが、既存の概念を覆し、新しいビジネスを開拓するためのヒントにぜひ触れていただきたい。

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株式会社ワニブックス
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書籍
『ももクロ非常識ビジネス学 アイドル界の常識を覆した47の哲学』
小島和宏著