デジタル変革で日本企業が巻き返すためには 斬新な環境とデータ分析で新たな気づきを
10年後、20年後も選ばれ続ける企業の条件とは何だろうか。これをやれば大丈夫だという明確な答えはないが、少なくとも、企業の歴史や規模に関係なく、経営者がDXの必要性を認識し、DXを推進しているかどうかがカギを握っているのは間違いないだろう。
グローバルでDXが推進され、さまざまなイノベーションが起こっている。日本企業の実情について、世界4大国際会計事務所「KPMG」傘下のKPMGジャパンでCDO(チーフ・デジタル・オフィサー)を務める秋元比斗志氏は次のように語る。
「残念ながら、日本企業は欧米の企業、さらには中国などアジアの企業に比べて出遅れたと言わざるをえません。大きな要因の1つが、活用可能なデータ量が少ないことです。欧米ではERP(統合業務システム)の導入などに応じて、早くからデータの活用が進んできました。その後、CRM(顧客情報管理)やBI(ビジネスインテリジェンス)の普及に伴うデータの蓄積や共通化が、データリテラシーを育み、結果としてAIを加速させたとも言えます。それに対して多くの日本企業では、依然として紙のデータが多く、外部との協業が進みづらい状況にあります」
ITへの投資についての考え方も旧態依然としたところが多いようだ。古いシステムのメンテナンスに多くのコストを割いており、データの可用性を高める投資ができていないという。
経済産業省も日本企業の現状について、2018年9月にとりまとめた報告書『DXレポート』において、「DXの必要性に対する認識は高まり、そのための組織を立ち上げるなどの動きはあるものの、ビジネスをどのように変革していくか、そのためにどのようなデータをどのように活用するか、どのようなデジタル技術をどう活用すべきかについて、具体的な方向性を模索している企業が多いのが現状であると思われる」と指摘している。
「イノベーションやDXといったキーワードを掲げるだけではなく、これからどのように付加価値を上げていくのか、そのためにどのようなテクノロジーや人、組織が必要なのかを考えることが大切なのです。意識を変えることも重要です。例えば、最初から完璧を目指すのではなくアジャイル型でプロジェクトを進めることや他社との協業、社外のデータの活用なども必要になります」(秋元氏)
日本企業がDXを推進するために必要なこと
近代的な高層ビルが立ち並ぶ大手町エリアに、昭和の匂いを感じさせるひときわ目立つオフィスビルがある。1958年に建てられた「大手町ビル」だ。このビルでは現在、「OPEN INNOVATION FIELD」をテーマに大規模なリノベーションが行われており、日本初のフィンテック集積拠点である「FINOLAB」をはじめ、世界最大級のソフトウエア会社の共創スペースや大手自動車メーカーの開発拠点などが開設されている。