富士通が組む「あの外資」は何がすごいか? もはや常識、IT版「手洗いうがい」の全貌
富士通がパートナーシップ締結、その狙いは
2018年10月、富士通は米国カリフォルニア州に本社を持つ「Tanium」とパートナーシップ契約を締結した。富士通の執行役員常務、小田氏はその狙いについてこう語る。
「一言で言えば、セキュリティの強化です。マルウエアを完全に排除するのは不可能な時代。Taniumなら自社のIT資産の実態をリアルタイムに可視化できますから、セキュリティポリシーへの適応状況を確認、漏れがあれば修正しておくという『事前対策(衛生管理)』が可能です。
さらにはマルウエア感染の影響を最小化する『事後対策(レジリエンス)』にも対応できるため、ぜひ組みたいと考えました」。
Taniumの創業は2007年。同社のCEO、Orion Hindawi氏いわく「最初の5年は、ひたすらテクノロジー開発に費やしました。販売に力を入れているのはここ5年です」。
同社のサービスを使えばリアルタイムに、かつ専門の技術者を持たずにマルウエアを予防できるとあって、海外では公的機関を含め多数の導入実績がある。15年の日本市場参入後も、そのクオリティの高さと使い勝手の良さで高い評価を受けており、数万規模のクライアントを持つ大手企業も含めすでに国内数十社で利用されている。
もはや従来型のセキュリティ対策でマルウエアを防ぐことは非常に難しくなってきている。そんな中Taniumは、新たなセキュリティ対策手法「サイバー・ハイジーン(衛生管理)」と「ビジネスレジリエンス」という2つの考え方を提唱し関心を集めている。
Hindawi氏はその内容について、こう説く。「そもそもマルウエアのターゲットとなる、IT資産の脆弱性自体を排除する発想を『サイバー・ハイジーン(衛生管理)』と呼びます。いわば風邪予防の手洗い・うがいのようなもので、限られたセキュリティ投資の最大効果を狙う考え方として注目されています。
一方『ビジネスレジリエンス』とは、マルウエア感染が発生してしまった際の復元力のこと。万が一の時には、感染原因や経路、影響範囲を可視化し、影響範囲の最小化やシステムの復旧といった対応を迅速に行うことがとにかく肝要です」。
リスクに備え、感染前の予防と感染後の対応、双方を準備しておくことが大切なのだ。
必要なのはあくまでリアルタイムの情報
2社のパートナーシップに話を戻そう。その背景には、セキュリティの強化に加え、もう一つの考えがあった。それは、5000社の顧客を持つ富士通のネットワークサービス「FENICS」(※)へのTaniumの採用だ。
すでに実現し、2018年10月末より提供開始している。また富士通は、オンプレミスのシステム構築だけでなくクラウドサービスとしてもTaniumを利用する意向で、「日本企業向けTanium操作用ダッシュボードを独自開発、提供いたします」(小田氏)。
※正式名称「Fujitsu Enhanced Information and Communication Services」