M&A交渉の先にある確かな成長 クロスボーダーM&A 2018
特別講演II (M&Aの実際)
最新のクロスボーダーM&A動向
~M&Aは日本を救う~
日本企業の海外M&Aを支援する独立系M&Aアドバイザー、GCAの渡辺章博氏は、同社が自ら行った米国・サヴィアン社、欧州・アルティウム社のM&A経験などを話した。メディアでは、M&Aの失敗が注目されがちだが、失敗とされたケースでも、買収企業をきちんと経営し、売却して投資を回収した例を挙げて「実はM&Aはリスクの少ない投資」と訴えた。しかし、問題処理に経営資源を費やし、経営陣のリスク回避傾向が強まるといった問題もあるので、「良い企業を選び、きちんとDDをしてサプライズを減らすことが大事」と述べた。保険のほかに、リスクを緩和する方法として、現金ではなく自社株を渡して買収するスキームを紹介。この手法でサヴィアン社を2008年に買収した同社は、買収直後のリーマンショックで苦境に陥った際に「相手株主とリスクをシェアしていたことで助かった」と語った。また、買収後、順調に売上を伸ばすアルティウム社については「買収相手に過剰な期待圧力をかけず、相手がハッピーになるようにサポートすべき」とPMI(買収後の企業統合)の重要性を訴えた。「M&Aが日本を救う」をミッションに掲げ、投資立国となった日本の将来のために、海外M&Aでつくった価値を日本に持ち帰るのと同時に、「ベンチャー企業のイノベーション、人材を取り込むことも必要」と指摘。日本の大企業による、国内テクノロジー・ベンチャー企業のM&Aを進めるための取り組みを強調した。
ディスカッション&QA
M&A交渉の先にある確かな成長
登壇者3人が会場からの質問に回答。DDをしたうえに表明保証保険が必要な理由について、宍倉氏は「オークションなどではDDの期間が2週間程度に限られ、専門家が徹夜で頑張っても、100%の問題発見は極めて困難だ。また、既知の事項は表明保証保険の免責となるが、DDを深堀りすると保険活用の意味合いは薄れるとの議論は、実態に即してない」と述べた。渡辺氏は、(DD資料を開示する)バーチャルデータルーム導入で、会社の様子を実際に見ないことも増えたことにより「DDの質の低下を感じる。問題への対応に経営者が時間を取られないよう保険もうまく使うべき」と話した。ウォール氏は「株主や経営陣が把握していないリスクに保険をかけることは重要。プロセス終盤に保険でカバーできない事項が判明すると、大きな問題になりがちなので、早い段階から検討すべき」と勧めた。