M&A交渉の先にある確かな成長 クロスボーダーM&A 2018

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縮小
少子高齢化による国内市場の縮小を受け、海外進出を加速させたい日本企業にとって、海外企業の買収が選択肢となってくるが、そこには企業経営を揺るがしかねないリスクも潜んでいる。東京・千代田区で開かれた「クロスボーダーM&A2018」では、保険や法務、アドバイザリーの専門家らが、M&Aの意義や、リスクマネジメントのノウハウについて語った。
主催:東洋経済新報社
協賛:JLTリスク・サービス・ジャパン

Keynote (リスクマネジメントと保険)
「表明保証保険」を始めとした
M&A保険の概要と戦略的活用法

JLTリスク・サービス・ジャパン
エグゼクティブ・バイス・プレジデント
宍倉浩司

国際保険仲介業者、JLT(ジャーディン・ロイド・トンプソン)の日本法人の宍倉浩司氏は、日本でも関心が高まるM&A保険について解説した。M&Aでは、専門家によるデューデリジェンス(DD)を行い、把握した潜在債務などのリスクは買収価格に反映させるなどして対応するが、DDで発見できない未知のリスクについては従来、売り手に表明保証させ、損害が出れば賠償を求めてきた。しかし、売却益をすぐに配当してしまうPEファンドが売り手のケースでは保証、賠償は困難なため、欧米では保証違反の損害を保護する表明保証保険が普及した。「この保険は数十億円から数千億円規模のディールが対象で、保険引き受け審査は英語のため、英文の売買契約書などが必要になります」。近年、オークションで増えた売り手主導で手配する表明保証保険については、事故対応・日本語対応を考えた場合、国内の仲介業者の関与が望ましい点につき注意を促した。また、DDで顕在化した税務や訴訟などの「既知のリスク」についても、それらをカバーする個別の保険が登場していることに触れた。M&A保険では、保険会社によって免責事由・範囲が異なるため、「複数の保険会社に見積もり依頼して、事前に保険でカバーしたいリスクが免責にならないか、確認が必要です。また、保険会社が後から免責事項を追加することもあり、英語での高度な交渉も欠かせません」と、保険仲介業者が介在する意義を説明した。

特別講演I (法務リスクの視点)
クロスボーダーM&Aを成功させる「法務のポイント」

アレン・アンド・オーヴェリー
外国法共同事業法律事務所
コーポレート部門 パートナー
ニック・ウォール

海外M&Aのリーガル・サービスを提供するアレン・アンド・オーヴェリーのニック・ウォール氏はM&Aで検討すべきことを中古車購入に例えながら語った。まず、車に詳しい人に車両をチェックしてもらうように、専門家による対象会社のDDを実施。「会社の価値は日々変わる」ため、売買価格については、正確な価値を価格算定(監査)基準日に算出し、クロージング日との差額は、想定される価格を買い手側に支払ったうえで、正確な価値を精査、後日に調整する「価格調整方式」と、価格基準日で価格を固定、以後の事業損益は買い手に帰属させる「固定価格方式」(いわゆる「ロックド・ボックス」とよばれる方式)があると説明した。株式売買契約書(SPA)は、価格や、当局の許認可取得など取引実行の前提条件、会社価値毀損禁止など売り手の誓約条項、表明保証と補償などで構成。認識されたリスクを売買価格に反映しない代わりに、問題が起きれば金銭を払う補償について「バッテリーの問題を知りつつ、交換せずに車を売り、一定期間内に問題が起きれば、その交換費用を払うのと同様」と説明した。また、米国と欧州のM&A実務の違いに言及。米国は、価格調整方式が一般的で、広範な表明保証など、当事者がリスクを分け合う考えが強いが、補償上限額は低い。一方、欧州は、固定価格方式が一般的で、表明保証が限定的で、オークションでは売り主がDDを行うこともある。また、補償の上限額は高いなど「国によってM&Aの取引条件に考え方は異なるので、相手を理解することが重要」と述べた。

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