繋がる「創業者」の熱い想い 東洋経済新報社 経営者フォーラム2018

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基調講演
事業拡大・事業承継のためのM&A活用法

M&Aキャピタルパートナーズ
代表取締役社長
中村 悟氏

M&Aキャピタルパートナーズの中村悟氏は「自身の寿命を越えて会社を残そうと願うオーナー経営者にとってM&Aは有力な選択肢」と語った。事業承継問題は多くの経営者が認識しているが、計画は進んでいないことが多い。しかし、中村氏は「自分の死後に決めてもらおうとすると、多くの人を不幸にします」と指摘。相続で株式が分散した結果、深刻な兄弟間の対立を招いた会社などの例に触れ、オーナーが全権を持つ間に、後継者に株式を集中させたり、後継者不在でも会社を存続させる次の体制の資本構成を決めておくことを求めた。60歳を超えて「自分に何かあったら」と不安になったオーナー社長が、同社の仲介で希望通りの買い手を見つけられたケースを紹介。仲介依頼のハードルを下げるため、企業価値算出と着手金を無料、成功報酬も一般的な算出方法よりも低くなるように設定していることを説明した。自らも一昨年、同業のレコフを買収。「時間をかけずに、求めていた業界再編M&Aの事業基盤を手に入れられた。買い手にとって、M&Aは最良の夢・目標の実現手段」と強調。譲渡される企業は、継続性や雇用の安定を、創業者は最大化された創業利益と、個人保証からの解放を得られるとして「関係者全員が幸せになるのが友好的M&A。より多くの経営者に使いこなしていただければ」とアピールした。

譲渡オーナー体験談

ミスズライフ
会長
小林 満氏
M&Aキャピタルパートナーズ 企業情報第十一部
橋場 涼氏

18年3月にファンドに会社を譲渡したミスズライフ会長の小林満氏は、仲介担当だったM&Aキャピタルパートナーズ、橋場涼氏の司会で、その体験を語った。同社は、おからを使った培地でブナシメジを生産。業績は順調だったが「社員が守りに入ってしまっていて、このままではまずいと思っていた」と振り返った。入社した息子も後継者になることに気が進まない様子だったこともあり「企業評価、着手金も無料なら試しに」と仲介を依頼。迅速な対応に加え、経営に通じ、キノコ栽培装置への投資資金力も豊富なファンドを紹介されたことで、トントン拍子で話が進んだ。「それぞれの技術経験に自負を持つ同業者相手では難しいと考えていましたが、良い話だったので、だまされているのかと思いました」と会場を笑わせた。従業員にも「寂しいくらいにあっさり」受け入れられ、今はファンドから来た新社長の下、若手が頑張る姿に「元気のいい会社になった」と喜んだ。創業者利益は、息子、妻とともに取り組む里山農業を元気にする事業への投資などに使うといい、交渉中の1年間は「今までやってきたことを整理する良い時間になった」と結んだ。

クロージング
M&A成功のポイント

再登壇した中村悟氏は、買い手、売り手それぞれに向けたM&A成功のポイントを伝えた。買い手に対しては、まず自社の明確な将来像を元に、買収する企業を絞り込んで依頼。出会った相手との交渉では「オーナー経営者への敬意」を重視して信頼関係を築く一方、資産や債務の把握の実務は専門家を雇うことを勧めた。

また、揺れる売り手の気持ちを考慮して「契約内容を固めたら速やかに決済すべき」と述べた。売り手には、創業者利益の課税は株式譲渡の場合、所得税に比べて低い、税率20%となるメリットを示し、後継者不在などでM&Aも選択肢と考えたら、企業価値を高めるために純資産を積み上げ、ワンマン企業を脱し、コンプライアンスを強化するといった取り組みを進める、ことをアドバイスした。

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M&Aキャピタルパートナーズ