知らないとヤバい、取引先の事業内容 批判の矛先が自社に向くリスクは甚大だ

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従前のCSRはとにかく自社の経済的・社会的メリットを狙って行われていましたが、これからはステークホルダーのためにCSRを推進する「ステークホルダーファースト」が主になると考えています。たとえば自社のサプライチェーンに連なる取引先についても、今一度事業内容を確認する必要があるでしょう。

いくら自社商品の環境負荷が低くても、取引先にそうでない会社があれば、批判は結果として自社に跳ね返ってくる。その点も忘れてはならないのです。

―CSRに関して企業側が抱える課題とは何でしょうか。

安藤 全体として、SDGsを始めとした国際的な枠組みが増え過ぎていることです。ビジネスは得てして、ルールをつくったところが勝つもの。大きなルールは、後々振り返ったときに初めて「あれが分岐点だったのか」と判明するのが常です。

SDGsの17のゴール

CSRに関しても、欧米では今まさにルールづくりが進められていますが、一方日本の大企業を見るとやはり遅れをとっている。売上高1兆円を超えるような企業でも、CSRの専任担当者は数人と少ない組織もあり、これでは日々移り変わる世界のトレンドについていくことは不可能です。

また、情報開示の仕方も課題となっています。今はCSR活動を行うこと以上に、その事実を「どう世間に広めるか」が重要です。欧米をはじめ、世界の機関投資家がCSRを重視する傾向にある中で、情報開示の手法次第で企業評価が大きく変わってしまう。日本企業も恐れることなく、戦略の一部として検討する必要があるでしょう。

―経営者やビジネスパーソンには、どういった姿勢が必要でしょうか。

PROFILE
専門はCSR/サステナビリティ領域の経営戦略、情報開示、企業評価。
『CSRデジタルコミュニケーション入門』(インプレスR&D)、『この数字で世界経済のことが10倍わかる』(技術評論社)など著書多数

安藤 まずは、一人ひとりが当事者意識を持つことです。当然ながら、経営陣から現場に至るまで全員に「自分ゴト」の意識を持たせ、かつ継続するのは難しいことです。私も経営層向けのCSRレクチャーを行っていますが、やはりトップがリーダーシップを見せなければ、従業員は動きません。ステークホルダーにアピールするためにも、先頭に立ってCSRを牽引していく意識が必要でしょう。

一方で現場の従業員も、自分の仕事がCSRにつながっていることを意識すべきです。たとえば、社員の働き方を考える人事部の業務は非常にCSRと親和性が高い。

CSRというと一見、経済合理性とは距離があるように見えるかもしれませんが、事業そのものの社会性を考えることがその第一歩であり、本領です。今やCSRは経営課題の一つとなっていますから、会社全体でリテラシーを高めることが不可欠です。

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