
「リカバリーウエア」なるものをご存知だろうか。耳慣れない言葉かもしれないが、実はこれ、リカバリーという名のとおり、「着ることで休養の質を上げる」という代物だ。すでに一部で話題となっていて、スポーツのナショナルチームでこれを導入しているところもある。そしてビジネスパーソンの間でも、仕事のパフォーマンスを上げる切り札として注目され始めている。
「革命的なスポーツギア」と最高賞を受賞
実は、最初にリカバリーウエアに注目したのは、大手トレーニングジムの「ゴールドジム」だった。2008年ごろ、当時はまだ“ケアウエア”という商品名だったが、ジムのトレーナーがその機能性に目をつけ、店舗で販売したところ大評判に。ひと月に数百万円を売り上げ、当ジムにおける物販の新記録をつくったという。実際にウエアを着た人たちからは、こんな声が多く挙がった。
「トレーニング後にウエアを着たら、普段よりも疲れが軽くなった気がする」「ウエアを着て寝たら、いつもよりぐっすり眠れたような気がする」
この評判が伝わり、その後新宿伊勢丹でも取り扱われるようになる。ここでも大きな支持を集める。しかし、購入者の多くがアスリートではない一般層で、リカバリーウエアの開発・販売元のベネクスは、ビジネスパーソンからのニーズもあることを確信する。さらに13年には、ドイツで開催される世界最大級のスポーツ用品の見本市・「ISPO(イスポ)」にて「革命的なスポーツギア」と評され、日本企業として初の最高賞を獲得した。
その後もリカバリーウエアは順調に売り上げを伸ばし、2010年の2月の発売から2018年5月までに累計70万着を販売。一着1万円前後という価格帯を考えると、異例のヒットといえる。今や全国の百貨店やスポーツ用品店、ドラッグストアで販売される他、ドイツ競泳チームやドイツナショナルアイスホッケーチーム、プロバスケットチーム・新潟アルビレックスBBなど、国内外のナショナルチーム、スポーツクラブでリカバリーウエアが導入されている。
“リカバリー”が促される最大の秘密は使用している繊維、ナノプラチナなどの鉱物を練り込んだ特殊素材「PHT(Platinum Harmonized Technology)」にある。開発を手がけたベネクス代表取締役社長・中村太一氏はこう話す。
「もともとは、寝たきり高齢者の床ずれのケア用に開発された素材なんです。開発にあたっては、鉱物を糸に練り込んでくれる繊維工場をいくつも当たったものの『できない』『機械が壊れる』と断られ続け、ようやく引き受けてくれた1社の元で実現したという経緯があります。ところが介護の現場では、価格の問題でまったく売れず……。そこで活路を見出したのが、運動後に着るウエアとしてのニーズなんです」
その後、前述の通りビジネスパーソンにまで需要が広がっていき、現在のユーザー比率は、アスリートが約3割・アスリートではない一般層が約7割となっている。ユーザーからは「疲れにくくなった」「よく眠れるようだ」「体が軽い」「気分がスッキリする」などの声が挙がっているという。
リカバリーウエアが、日々疲労と戦うビジネスパーソンに、具体的にどんなソリューションをもたらすのか。ウエアの効果的な使い方とあわせて聞いてみた。
リカバリーウエアを“オフ”のスイッチに
中村氏が勧めるのが、リカバリーウエアを“部屋着”とする使い方だ。
「家でリカバリーウエアを着てくつろいだり、着たまま眠ることで、休養の質を大きく高める可能性があります。今の世の中、スマホやタブレットでつねにメールやSNSをチェックでき、仕事とオフの境目がどんどん曖昧になっています。でも『帰宅してリカバリーウエアを着たら仕事はおしまい』とウエアをオフの“スイッチ”とすることで、心身にとってより深い休養をとることができるかもしれません」
またリカバリーウエアは出張でも重宝する。たとえば、飛行機の中で着用すれば、長い移動時間を良質なリカバリータイムに充てられる。リカバリーウエアは部屋着に向くスウェットタイプや、飛行機移動に向くジャージタイプ、運動前後の休養に向くスポーツタイプなどタイプがいくつかあるので、用途に合わせて選ぶのがいい。また新幹線をはじめ電車移動の際には、アイマスク型やネックウォーマー型など、手軽に使えるアクセサリータイプも便利だ。中村氏にはこんな目標がある。
代表取締役社長
中村 太一 氏
「家に帰ったらリカバリーウエアを着るのがあたりまえ、という存在にすることが究極的な目標です。現代人は活動量も受け取る情報量も100年前より圧倒的に増えている反面、体はほぼ進化していません。だからこそ、休養の部分を強化してバランスをはかる必要があるのです。10年後・20年後には『リカバリーウエア』という言葉が、現在の“パジャマ”や“ルームウェア”のように、部屋着の代名詞として使われていたらいいですね」
一着1万円前後と、決して価格は安くないが、衣料品としての寿命は他の衣料品と同等ということを考えると、コストパフォーマンスは悪くないのではないだろうか。1年の疲れが溜まるシーズン、パートナーや家族、上司など、身近な人へのプレゼントとしても喜ばれるだろう。