デジタル広告におけるリスクマネジメント Digital Risk Management Forum 2018
特別講演
これからのビジネスを支えるAIとその活用事例
日本マイクロソフトの阿佐志保氏はAIを使ったソリューションやビジネスにおける活用事例について話した。冒頭で、アップロードされたビデオをAIで分析して英語のナレーションをテキストに変換すると同時に、登場人物数やキーワード、キーフレームを抽出できる同社の「Video Indexer」のデモを披露。「英語の聞き取りが苦手な人でも、AIを使うことで、より多くのことを達成できる」と述べた。
こうしたインテリジェントテクノロジーを上手くビジネスに活用することで、不完全なデータからの推論、データの意味を理解、人との自然な対話などが可能になる。例えば、コンテンツ配信では、対話を通じて顧客を引き込み、表情や言葉から顧客の気分を把握して高度にターゲティングしたマーケティング活動を行って顧客エンゲージメントを向上。コンピュータへの指示を音声で受けたり、最適な人材リソースへのリンクをしたりするなど、従業員の働きを強化できる。また、動画のハイライト、予告編作成の作業時間を短縮して最適化。仮想現実や複合現実体験も使って、顧客に新たな購入方法を提供する領域でも、AIの活用が期待されている。
具体的な国内の導入事例では、顔の特徴や表情から読み取った属性や感情に応じて広告を出し分けるデジタルサイネージや、ライブイベントやアミューズメントパーク来場者の盛り上がりを把握、満足度を可視化する分析システム、来店者数や感情認識で商品販売戦略を支援する店舗マーケティングサービスを紹介。またAIの自然言語機能を使ったチャットボットによる情報提供や、マニュアル文章の校正といった、活用事例を挙げ「皆さんのアイデアを寄せていただき、共に新たなサービスをつくっていきたい」と呼びかけた。
協賛講演
SNSにおけるリスクトレンドと
AIを活用したソリューション
テクノロジーの進展に伴って発生するデジタル・リスク・マネジメントのソリューション開発、提供を手がけるエルテスの平野元希氏は、プロモーションがもたらすネット炎上と、その対策について話した。最近、批判を受けた複数のプロモーション事例を紹介。「多様性、個人の尊重、働き方改革をはじめとする時代の潮流に反するような、ジェンダーなどをめぐる差別、従来の固定観念、ブラック企業的労務問題などのテーマは、若い人の反発を招いて、ネット上で盛り上がりやすい」と指摘した。一方で、過剰なリスク回避は、広告のクリエーティビティを失わせて、退屈な内容にしてしまうトレードオフも生じやすく「法律や差別表現への抵触を避けるのは当然だが、どこまでリスクを許容するかについて、炎上リスクのトレンドや、過去の事案を踏まえて明確にしておくべきでしょう」と述べて、社内のクリエーティブチェック体制構築の重要性を推奨した。
炎上は、投稿された火種が、拡散、さらに爆発的拡散を経て社会的批判に達するというメカニズムになっている。対処法としては、事前のチェックやスクリーニングで予防。そこで排除しきれない火種も、初期段階で発見すれば、沈静化できるので、ソーシャルメディア上の話題をチェックするソーシャルリスニングを通じて早期検知の仕組みを構築。検知した火種に対しては、速やかに適切な対応をするために、「掲載メディアや拡散数からリスクレベルを定め、レベルごとの対応の仕方をあらかじめ決めておくといった危機管理体制の整備が重要です」と強調した。同社も、リスク管理支援サービスとして、常時、ソーシャルメディアから収集する情報のリスクをAIや専門スタッフによって評価。高リスク案件は企業に緊急通知して、緊急の対応支援のコンサルティングも行う。最後に「当社はリスクマネジメントからのアプローチで、デジタル広告のリスク遮断、健全化を支援していきたいと考えています」と語った。