IoT時代を迎えた物流ビジネスの再生と躍進 Toyokeizai Logistics Conference 2018

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Session 2
トラック業界の現状と今後の課題

一般社団法人 東京都トラック協会
常務理事
遠藤 啓二

東京都トラック協会の遠藤啓二氏は、貨物輸送量の9割が、中小を中心とするトラック運送事業者に支えられている現状を説明。そのトラック業界を取り巻く、深刻なドライバー不足や燃料価格の高騰などの課題を挙げた。そうした厳しい事業環境の中でも、業界が自主的に取り組むグリーン・エコプロジェクト活動で「ゆっくり発進、ゆっくり停止」を徹底し、CO2排出削減など環境対策だけでなく、交通事故の削減にも貢献していることを紹介。貨物輸送の最大の課題とされるラストワンマイルの配送について「歩いてくれない荷物の輸送は、旅客輸送に広がるウーバーのようなライドシェアリングの仕組みと同じにはできないが、テクノロジーを利用できる可能性はある」と述べ、ITを使った新たな仕組みの登場を期待した。また、新たな輸送の担い手として注目される女性や高齢者ドライバーらに対するITを使った効率的な教育システムの登場にも期待。「皆さんと一緒に課題を解決したい」と語った。

Session 3
改善を導く輸配送計画システムの構築事例

キヤノンITソリューションズ
R&D本部 数理技術部
シニアコンサルティングスペシャリスト 博士(情報学)・技術士(経営工学)
中尾 芳隆

数理技術を使ったサプライチェーンの計画系ソリューションを手掛けるキヤノンITソリューションズの中尾芳隆氏は、輸配送のオーダー、車両等の利用可能資源、区間距離や各種制約条件から高効率の輸配送スケジュールを導き出すソリューションを紹介した。計画系システムの難しさとして、複数の目的がトレードオフ関係にあること、現場要件が多様であいまいであること、計画立案段階で受注データがそろわないことが多いこと、の3点を挙げ、その解決には「現場重視」を強調。「現場との高い対話力と科学的マインドで、トレードオフ関係を見極めてバランスを取り、要件に柔軟に対応、さみだれ式注文に迅速に対応する」システムづくりをアピールした。

Keynote
Logistics4.0
~物流における新たなビジネスの創造

ローランド・ベルガー
プリンシパル
小野塚 征志

ローランド・ベルガーの小野塚征志氏は、テクノロジーの進化に伴うロジスティクス4.0の変革は、ロボットや自動運転による「省人化」と、企業・業界の垣根を越えてサプライチェーン全体の物流機能がつながる「標準化」をもたらすと指摘した。荷主と物流会社をつなぐプラットフォームの開発を進めるITベンダー、パレットなどにタグを付けてジャスト・イン・タイムを簡単に実現できる貨物トラッキングの共通システムを構築する部品メーカーの取り組みを紹介して「労働集約型産業から資本集約型装置産業へ、の転換がロジスティクス4.0のポイント」と述べた。

そこを勝ち抜くには、特定業界のサプライチェーン全体を押さえる。デジタル技術を使い、フォワーダー(貨物利用運送事業者)など流通の特定プロセスを支配する。また、返品商品のアウトレット販売まで手掛けるビジネスモデルを築いた返品物流会社の例を示して、物流以外のプラスアルファの価値を提供する。自社に蓄積された物流ノウハウを生かして設計した物流機器・設備を提供する――の4つの方向性を提示した。また、一般事業会社が、自社の物流アセットの余剰を外部に提供して、新規に物流ビジネスに参入できる可能性にも言及。「20年後には無人倉庫、自動運転が普通になるかもしれません。この変化にいち早く適応し、ビジネスチャンスを逃さないでいただきたい」と話した。

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