IoT時代を迎えた物流ビジネスの再生と躍進 Toyokeizai Logistics Conference 2018
ドライバー不足をはじめとする物流危機が深刻化する中、急速に進化するIoTやAIなどのICTテクノロジーを活用した物流ビジネス変革の道筋を探る「Toyokeizai Logistics Conference 2018」が東京・中央区で開かれた。運輸・物流業界の関係者ら約150人が参加。ロジスティクスの現状と課題、変革の方向性や未来について専門家の話に耳を傾けた。
Keynote
企業ロジスティクスの未来
流通経済大学の矢野裕児氏は、「企業内の生産性向上が進んだ一方で、企業をまたぐ物流が低効率のままになっていることが今の物流危機の背景にあります」と語り、物流情報の電子化、標準化を進め、企業間で情報を共有化し、物流ビッグデータをIoTで収集、分析を進める必要性を訴えた。テクノロジーや第4次産業革命の進展は、物流現場に、ドローンや自動走行車両などの輸送手段、AIによる輸配送業務の最適化といった変革をもたらしつつある。さらに、サプライチェーン全体で情報共有が進めば、需要変動の先を読んで、過剰在庫や欠品を避け、効率的ロジスティクスが可能になる。また、顧客個々のニーズに対応するマスカスタマイゼーションが価値を創造し、サプライチェーンからバリューチェーンへの転換が起きる可能性にも言及した。矢野氏は「IoTが、目先の効率化にとどまらず、サプライチェーン全体を変革する可能性を考えるべき」と強調。IoT、AI、ロボットの進展によって、労働集約型の物流産業は、高度に自動化された装置を使う資本集約型産業へのシフトを迫られ、複数企業が連携するネットワーク型物流プラットフォーム構築を促し、中長距離貨物輸送や過疎地等でのラストワンマイル対応の効率向上に寄与することも期待した。最後に「テクノロジーを実際に導入するには、現場が使えるようにすり合わせの議論をすることもカギになります」と語った。
Session 1
「アセット見える化」が可能にする物流ビジネス変革
半導体設計大手で、IoT向け統合プラットフォーム「Pelion(ペリオン)」を提供するアームのトーマス・クリアン氏は、「経営の意思決定を支えるには、サプライチェーンの端から端まで、モノの流れをリアルタイムに100%見える化すべき」と強調。従来手法のバーコード・スキャンにかかるコストについて指摘し、IoT活用によるスキャンレス化を呼びかけた。春田篤志氏は、Pelionの主要なサービスとして、(1)世界の通信事業者が提供する回線にIoT機器を接続し、その回線を管理、(2)多用・大量のIoT機器のソフトウエア更新や機能の与奪を管理、(3)機器から収集したデータに対する統合・蓄積・前処理などの管理を紹介。多くのパートナーと共同でソリューションをつくれる強みを訴えた。