どうして商社が金融事業を?
“実物”に立脚した金融ビジネスモデルの開拓
三菱商事
商社と金融。この組み合わせは少々突飛に見えるかもしれないが、金融も商社が持つ機能の一部である。ミネラルウォーターから人工衛星まで、と言われるように幅広い商品を取り扱う商社は、一方で、物流、金融、ITなど商売の周辺を支える機能、サービスのノウハウを蓄積してきた。
このノウハウで商売はできないだろうか――。そう考えた商社は近年、商品に軸足を置いた伝統的な「商品営業」に加えて、機能・サービスを売り物とする「機能営業」の開発に取り組んできた。商社の金融事業は、この機能営業の重要な柱の一つである。
三菱商事の新産業金融事業グループは2007年に発足したが、ビジネスを展開しようとした矢先にリーマン・ショック(08年)に襲われた。「船出の直後に船底に穴が開いたような」事態であったが、これを機にグループ内では思い切った事業コンセプトと内容の整理を行い、商社の強みを生かした金融ビジネスを再構築した。
そもそも、金融ビジネスは銀行、証券、リース、商品先物、プライベート・エクイティなど多彩で、専業で事業展開している企業も数多く存在する。その中で三菱商事は差別化するカギを「商社らしさ」に求めることにした。