走り続ける自転車は倒れない!
商社の変化とオプティミズムの共有
双日総合研究所
ノーベル賞経済学者のロナルド・コースは、企業の存在理由について、「取引コストを下げるため」と喝破している。商社は人材やネットワーク、様々なビジネスのノウハウといった経営資源を内製化し、さらに効率化を進めることで、取引コスト低減のメリットを最大限に活かしてきた。その過程で、社員は同じでも、いつしか違う仕事をしているという変化を実現してきたのだ。ひとつだけ変わらなかった点は、商社がある種のオプティミズム(楽観主義)を共有してきたということである。
メーカーの生産設備のようなハードウェアを持たない商社は、「明日は何かいいことがあるだろう」と楽観して走り続けることが、会社を継続させる原動力となってきた。そしてハードウェアを持たないことを強みに、過去を捨てて環境変化に順応してきた。何度も変わってきたという組織の記憶が、次も変わっていけるという楽観主義を培う。いわば自転車のようなもの。倒れるかもしれないと思って止まれば倒れるが、倒れないと思ってペダルをこぎ続ければ、前へ進み続けることができる。
たとえば、今の商社の収益の重要な柱でとなっている資源ビジネスは、10年前に種をまいた先輩たちのおかげで収益が確保されている。今、資源ビジネスに従事する社員は10年後のために種をまく。その場しのぎではなく、楽観主義に裏付けられた未来志向が、商社の仕事の魅力と言えるかもしれない。