バークレイズ・グループの歴史は創業325年以上と非常に長い。同社は英国人のジョン・フレアムとトーマス・グルドが銀行家として取引を開始した1690年を創業の年とする。その後、世界の金融市場の中心地であるロンドンのロンバード・ストリートに拠点を移し、1864年には新たなバンキングハウスを開設。1896年にはグループ初の企業体として、バークレイ・アンド・カンパニー・リミテッドを設立した。以来、着実に成長を重ね、世界でのプレゼンスを拡大してきた。2008年には金融危機の震源地となったリーマン・ブラザーズの北米投資銀行業務と資本市場業務を買収し業容を拡大。世界有数の投資銀行としての実力を蓄えてきた。日本で投資銀行業務を行うバークレイズ証券代表取締役社長の木曽健太郎氏は次のように語る。
代表取締役社長
木曽健太郎
「われわれのような長い歴史を持ち、一貫して社名を変えていない金融機関はほかにはないと自負しています。金融業者にとっていちばんのリスクはお客様の信用を失うことです。もともとわれわれは商業銀行を発祥としているため、信用を大事にしてきました。だからこそ、この長い歴史を築くことができたのです。投資銀行業務においても、お客様との長いお付き合いを重視し、日本でさらなる歴史を積み重ねたいと考えています」
女性比率は47%、ダイバーシティを実現させたオフィス
バークレイズ・グループが日本でビジネスを開始したのは1969年。バークレイズ銀行の東京駐在員事務所を設置したのが始まりだ。そこから業容を拡大し、現在はバークレイズ証券、バークレイズ銀行東京支店、バークレイズ投信投資顧問の3社が日本の多くの顧客に対し、プロフェッショナルな金融サービスを提供している。
「われわれの組織は非常にフラットであり、風通しの良い社風を有しています。部門間の垣根も低く、世代や役職に関わりなく社員どうしが尊重し合える環境があります。性別を問わず優秀な人材を積極的に採用しており、現在社員の女性比率は約47%です。ダイバーシティを実現させたオフィスで、約25カ国の人材が働いています。性別や国籍に関わりなく、優秀な人材が日々お客様にさまざまな金融サービスを提供しているのです」
同社はほかにも社外活動の一環として、日本において子供向けのクラシックの定期演奏会やウィルチェアー(車いす)ラグビーチームへのスポンサーシップ活動、東北の震災被災地への復興ボランティア活動などを積極的に行っている。来年2019年には日本オフィス開設50周年を迎え、さまざまな催しも予定されているという。そんなバークレイズ・グループは、ここ数年はグローバルな規模で経営戦略の見直しを積極的に行ってきた。
「グループの事業再編を図るため、さまざまな施策を打ってきました。たとえば、コアとなる事業以外のビジネスを売却するなどして、世界中でバークレイズが強みのあるビジネスに集中できる体制を整えてきました。こうしたさまざまな施策の結果、直近の決算では非常に満足できるパフォーマンスを上げることができました。また、英国最大の金融グループということから、ブレグジットを控え、われわれの動向は各方面から注目されています。事業再編も終わったことで、これからは本格的な攻勢に転じていきたいと考えています」
グローバル化、IT化で変わる投資銀行業務
バークレイズ・グループの強みは、米国と欧州の二つのコンビネーションを利用できることにある。ポンド、ユーロ、ドルのいずれについてもバイアスを受けることなく、中立的な立場で顧客にいちばん適切なアドバイスを提供することができる。それがグローバル金融機関としての証しの一つであるとも言えるだろう。
「投資銀行業務はもともとアメリカが先行していましたが、バークレイズ・グループは真の国際金融機関としてそれらアメリカの金融機関とも肩を並べる存在となりました。アメリカ系とヨーロッパ系で取引のバランスを取るために、われわれを選ばれるお客様も増えています」
そんな投資銀行のあり方も、リーマンショック以降、変化を遂げている。これまではヘルスケア・テクノロジーなどのセクターごと、株式・債券といったプロダクトごとに厳密に業務が分かれていたが、現在はITの進展によって、セクター間の垣根が低くなり、プロダクトも専門分野ごとではなく、総合的な立場で顧客のリクエストに応えることが必要となっている。
「われわれは“クロスアセット”という形を取り、お客様が必要とされているものを総合的に提案する営業体制を整えています。私自身も金融業界で30年間、さまざまな投資銀行業務を経験してきましたが、若い人を育てる意味でも、部門間の垣根を低くすることが重要だと考えています」
現在、日本企業では国内だけでなく、海外への投資にも積極的になっている。
「世界を見渡せば、さまざまな投資チャンスがあります。ただ、投資で成功するためには、当然ながら投資リスクを考慮する必要があります。その意味で、日本では投資家がこれからファイナンシャルリテラシーをさらに磨いていくことが必要となるでしょう。アメリカやイギリスの市場は投資家層に厚みがあり、いったん市場が落ち込んでも再生が早い。投資の本場で成功するためには、短期売買を繰り返す「投機家」ではなく、中長期の資産形成を目指す「投資家」として行動することが重要です。そのために、われわれは日本の金融機関とは異なった立場から、お客様にアドバイスやサービスを提供していきたいと考えています」
一方、海外の投資家も日本に熱い目を向けつつあるという。
「今、欧米のプロフェッショナルな投資家たちが、日本にオポチュニティがあるとして続々と進出してきています。それは日本企業のガバナンスがしっかりしつつあるからです。ここ数年、社外取締役制の導入など多くの日本企業でガバナンスの強化が図られてきたことで、海外のプライベートエクイティも興味を持ち始めているのです。その資金量は膨大であり、彼らが進出してくれば日本の市場も必ず活性化するはずです。私も日本市場の魅力を海外の投資家に向けてたびたび説明していますが、彼らの反応はとてもいい。クロスボーダーの時代を迎える中、われわれの世界中のネットワークを利用して、日本企業と海外の投資家との仲介サービスなども積極的に行っていきたいと考えています」
これからますますグローバル化が進む中、バークレイズ・グループは日本でどのような存在を目指していくのだろうか。
「さまざまな世代、バックグラウンドの人たちにとって魅力的な会社であり続けたいと思っています。そうでなければ、企業として良いサービスを提供し続けていくことができないからです。これまで金融業界はずっとイノベーションを続けてきました。これからもイノベーティブであるためには、われわれ自身が変わっていかなければならない。そのためにも、グローバルな金融機関として日本でも新たな取り組みをどんどん進めていきたいと考えています」