激変するビジネスモデルと金融の近未来像 FINANCE×DIGITAL SHIFT 2018 Autumn
変化の著しい金融環境を生き抜くために地方銀行として取り組むべきこと
琉球銀行の松原弘樹氏は、顧客に感動、職員にやりがいをもたらす「ファン」をキーワードにした次世代店舗改革を紹介した。地域金融機関の最重要チャネルとなる営業店において、紙や印鑑などの各種レス取引、事務処理のシンプル化、自動化に取り組み、「デジタルを最大限活用することで、お客様とコミュニケーションを密にして、地域に根差し『人』だからこそ提供可能なコミュニケーションを確立することが、地域金融機関の生き残る道」と述べた。
事例講演
三井住友銀行が展望する生産性向上への近未来図
〜Cognitive OCRとRPAのシナジー効果
2020年までに500億円の大幅なコスト削減を打ち出し、業務効率化を推進する三井住友銀行の山本慶氏は「さらなる生産性の向上を実現するためには、単に頑張れといった精神論ではなく、従業員に『使える』と思ってもらえる具体的なツールが必要であり、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)と、コグニティブOCR(光学的文字認識)は非常に有用なツールでした」と評価。実際の導入に際しては「現業を不断に変革し、圧倒的な生産性向上の実現を目指していくという経営トップのメッセージが必要になる」と指摘した。一方で、テクノロジーを使いこなすには、現場が納得して、アイデアを出してもらうことが不可欠で「トップダウンとボトムアップの組み合わせが大事」と強調。「テクノロジーを取り入れ、業務を改善した結果、振り返るとイノベーションになっていた」という自然体の取り組みを示した。
IBMの河村洋一リーダーは、ソリューションについて技術面を説明。「AIもRPAもデータがないと動かない。紙をデジタルデータ化するOCRがカギ」と述べた。プラットフォーム構造でコストを抑える一方、非定型や手書きなど文字種別に応じてOCRエンジンを使い分けて認識率を向上させ、リターンを引き上げ、ROI重視の要求に応えた。100%ではないOCRの読み取り結果を補完するため、三井住友銀行ではOCRの識字結果と過去の送金履歴をRPAが突き合わせ、人のチェックの手間を削減しており「OCRとRPAの組み合わせは重要」と語った。
パネルディスカッション
銀行のデジタル化
-激変するビジネスモデルと金融の将来展望
講演した松原氏と鶴田執行役員に、元日本銀行員で、現在はフィンテック企業、マネーフォワードの神田潤一氏を加え、会場からライブ投票形式で意見を集めつつ、金融機関のデジタル化の進捗度や阻害要因について話し合った。
神田氏は、キャッシュレス化で蓄積された消費データから新たなサービスが生まれ、消費者のメリットになる循環が近い将来に始まるとの見方を示した。日銀から出向した金融庁でオープンAPI推進に携わり、現職でも銀行との提携を進めてきた経験から「銀行は危機感を持ってデジタル化を進めてほしい」と述べた。
松原氏は、危機感が高まりにくい現状や、失敗体験が蓄積されにくい銀行の組織風土を阻害要因に挙げ「企画担当者がどれだけ危機感や当事者意識を持てるかがカギ」と述べた。
鶴田執行役員は「小さく始めた」デジタル化プロジェクトの3分の1が中断に終わったという調査結果を示し「スタート時にビジョンを描き、位置づけを明確にすべき」と語った。
モデレーターの田口潤氏は「近く大変化が起きる可能性がある。この場で得た知見を生かし、テクノロジーの活用を進めてほしい」とまとめた。