激変するビジネスモデルと金融の近未来像 FINANCE×DIGITAL SHIFT 2018 Autumn

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テクノロジーが加速度的に進化し、従来のビジネスのあり方を大きく変えるデジタル化の波は、金融業界にも押し寄せている。喫緊の課題となった本格的なデジタル化に対し、金融機関はどう向き合うべきかを考える「FINANCE×DIGITAL SHIFT 2018 Autumn」が東京・中央区で開かれ、金融機関などから約400人が参加。最新の動向や先進事例に耳を傾けた。
主催:日本アイ・ビー・エム
メディア協力:東洋経済新報社

基調講演
HSBCのデジタル&イノベーション戦略:
顧客本位のデジタル・トランスフォーメーション

ルイス・サン氏
HSBCグループ
グローバル・リクィディティ&キャッシュ・マネージメント部門 アジア太平洋地域プロダクト・マネージメント統括責任者

外資系銀行大手HSBCのルイス・サン氏は「従来のビジネスと消費者の間に入ってきたデジタルプラットフォームが、消費者の意思決定に影響を及ぼすようになり、新たなバリューチェーンが創造されている」と、デジタル化する経済を概観。「世界2兆ドル規模のモバイル決済市場の約4割を占める中国ではデジタル・ペイメント・インフラの充実が、デジタル経済の成長の大きな柱になっている」と指摘した。金融サービス領域では、電子マネーによる支払い、オンライン投資、マイクロローン、小口の保険の4分野のデジタル化が顕著で「スマートフォンで買い物をする若者の習慣が一般的になったことを受け入れ、従来型ビジネスは顧客との関係を再構築する必要がある」と述べた。HSBCもデジタル分野の投資を拡大。携帯電話番号を知っていれば送金できるリアルタイム決済の新展開のほか、多様な電子マネーに対して小売業者がそれぞれと契約しなくても支払いを受けられるようにするワンストップの仕組みや、モバイルアプリの生体認証などを推進。高速で進むデジタル化に「立ち止まる余地はありません」と訴えた。

事例/IBM講演
データとテクノロジーが迫る金融ビジネス・モデル変革

鶴田 規久氏
日本アイ・ビー・エム
執行役員
インダストリー・ソリューション事業開発担当

IBMの鶴田規久執行役員は、来店客数の大幅減、中堅人材不足、コンプライアンス強化の要請など金融業界を揺さぶる「25年に一度の変換点」を指摘。チャネル高度化、業務最適化、フィンテック企業との協業による新規ビジネス創造などのビジネスモデル変革―という直面する三つの課題を挙げた。解決策として、産業用ロボットとAIを組み合わせた帳票の自動処理や、政府間会合FATF(金融活動作業部会)のマネーロンダリング対策などの審査を控え、買収した金融コンサルティング、プロモントリー社の知見やAIを活用したKYC(顧客確認)サービスの提供を紹介した。2017年の銀行法改正で努力義務が課されたAPI公開は「提携するフィンテック企業との新しいサービス開発も期待できる」と解説。また、国際貿易電子化や地域通貨開発を目指すブロックチェーンプロジェクトの動向に言及して「実証から実装段階に入りつつあります」と、金融機関に対応を急ぐように促した。

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