世界有数のアパレル企業がやろうとしていること
アパレルのグローバルブランドとして世界の人々から親しまれているGAP。アメリカのサンフランシスコを発祥とし、現在は日本、ヨーロッパなど世界各地で店舗を展開している。グループ傘下にはOLD NAVY(オールドネイビー)やBANANA REPUBLIC(バナナ・リパブリック)など有力ブランドを擁し、世界有数のアパレル企業に成長しているが、そのグループ全体を統括しているのが、Gap Inc.だ。
そんな同社が今、世界的なサスティナビリティ(持続可能性)の実現に向けて、グループ全体で環境保護や社会的課題の解決に努めている。その取り組みについて、同社グローバルサスティナビリティ シニアバイスプレジデント兼Gap財団プレジデントを務めるデイビッド・ヘイヤー氏は次のように語る。
「私たちの活動は、世界的な環境保護を推し進めると同時に、途上国の工場で働く人々の労働環境改善を大きな目標としています。そのために、私たちは、より賢明で効果的に、一つひとつのプログラムを進化させることに日々努めているのです」
グローバルサスティナビリティ シニアバイスプレジデント
デイビッド・ヘイヤー
へイヤー氏が率いる同社グローバルサスティナビリティのチームは現在75人、世界12カ国に拠点を有している。もともと同社は2004年から業界他社に先駆けてCSRレポートを発信しているが、以来、毎年内容をブラッシュアップさせながら活動の向上に努めている。同社がそれだけサスティナビリティに熱心な理由は、どこにあるのだろうか。
「私たちの会社は、1969年に1号店をオープンして以来、独自の道を歩んできました。その象徴が、ただの衣料店ではなく、世界で活躍できる大義を持ったブランドを構築したいという志です。創業以来およそ50年、私たちは、その志を会社全体で育んできました。現在、Gap Inc. の下、多くのアイコニックなブランドを有していますが、それらのブランドを通じて自分たちの志を世界に伝えることが可能になったのです」
そんな同社の取り組みの一つが2016年からスタートしている「ベター・コットン・イニシアチブ(BCI)」への参加だ。BCIは綿花栽培で使われる水や化学品を削減し、環境保護を図ると同時に、綿花農家のサポートを行っている。BCIに参加することで、グループ全体で1億2000万ポンド以上もの品質の良い綿を調達できることにもつながった。社名を受け継ぐGAPでは、2021年までに全ての綿を、BCIコットンなどのより持続可能な調達源から仕入れることを目指しているという。
「アパレル業界にとって、綿は非常に重要な素材です。現在、アパレル業界ではプレーヤーの数が増え、細分化が進んでいますが、今後もより良い綿を栽培し続けるためには、環境保護に尽力しなければならない。そのためには、人にも環境にもやさしい循環型のグローバル体制を築く必要があるのです」
そんな“循環型経済”を実現するために、同社では「2020サーキュラー・ファッションシステム・コミットメント」などアパレル業界全体の取り組みにも積極的に参画している。こうした取り組みを長年続けてきたことで、従業員の働き方や意識にも変化が出てきたという。
「たとえば、デザイナーは素材を選ぶ際、何を選べば環境への影響が少なくなるのか。いろいろなオプションを考えるようになりました。そうした意識が社内全体に広がり、デザイナーだけでなく、調達やロジスティクスなど多くの部門が一緒になって一つのゴールを目指すようになりました。社内のあらゆる部門が協力することで、日々、新たなプロジェクトのアイデアの芽が生まれているのです」
そんな全社で取り組む姿勢が浸透した結果、途上国の縫製工場で働く従業員に向けて、100%デジタルで給与を支払うといった取り組みもスタートしている。最新のデジタルトレンドを取り入れることで、途上国の従業員の生活環境を高めると同時に、業務の効率化にも貢献しているという。
「世界中に拠点を持つグローバル企業として、こうした小さな変化を一つひとつ起こしていくことが、結果として、世界を変革することにつながっていくと考えています」
グループの中核GAPのプロジェクトを世界へ
現在、同社では世界中のGAP店舗で「GAP FOR GOOD」というプロジェクトに取り組んでいる。「GAP FOR GOOD」とは、地球にとってより良いプロダクトをつくるためのプロジェクトだ。

「GAPはこのプロジェクトを通じて、デニムの製造過程で使われる工場用水のリサイクルを始めました。また、P.A.C.E.と呼ばれる、私たちの洋服をつくる工場で働く女性のための、生活に必要な教育やトレーニングプログラムのサポートもしています。私たちの会社では、デザイナー、マーケティングほか、すべての従業員がサスティナビリティ活動に取り組んでいます。
それは社会的課題の解決は、企業としての責任であると考えているからです。かつてはサスティナビリティの取り組みを行っている会社も少なく、もしやっていても社内の一部の人が担当しているというイメージでした。しかし、いまはそんな時代ではありません。マネジメント層も積極的に関与することで、社内外でコラボレーションを生みやすくなっているのです」
では、こうしたサスティナビリティの取り組みを成功させる秘訣とは何だろうか。それは活動の枠組みを決めた後、いかに社内外のステークホルダーを巻き込んで、実行していくかがポイントになるとヘイヤー氏は言う。
「サスティナビリティの実現は、一つの企業だけではなく、業界全体で取り組まなければなりません。一つの企業だけではアイデアも限られてしまいますし、思うような結果を得ることもできません。だからこそ、競合他社や、NGO、大学などと協力してプロジェクトを進める必要があるのです。私たちはグローバル企業の社会的責任として、今後も多くの方々とともに、この取り組みを広げていきたい。そう考えています」