第3回
カロヤンはじめて物語
さらなる効果を求めて
こうして、消費者から絶大な支持を受けていた「カロヤン」だが、それにあぐらをかいていたわけではない。さらに効果を高めるため、当時の研究者は「生薬成分」に注目した。
「中国の本草綱目(ほんぞうこうもく)という本草学の研究書から、育毛に効果があると考えられる生薬を15種類ほど選び出しました。その後検討を重ね、最終的に“カシュウ”と“チクセツニンジン”に絞りこみ、基礎試験を行うことで、2つの生薬を配合したカロヤンに、それまでの製品以上の発毛促進効果が得られるであろうと予見するに至りました。この配合成分を用いて臨床試験を行ったところ有効率は83.2%と高く、これを踏まえて生薬配合の商品『カロヤンアポジカ』を発売しました」と開発氏は説明する。
2000年頃になると、海外からも様々な育毛剤が入ってきた。そのため、次なるカロヤンの進化として選択したのが、カルプロニウム塩化物の増量だった。
「濃度が高い方が効果も高まることはわかっていました。それをどこまで上げるかが研究の課題でした。カルプロニウム塩化物を2%にまで上げた処方で、安全性と有効性を検討し、その有用性が確認できたため、カルプロニウム塩化物2%の商品を発売しました。それが、『カロヤンガッシュ』です」と開発氏。
その際、より安全性を高めるために工夫したのが容器だった。1回に使用するカルプロニウム塩化物の量を一定に保つため、使用時に定量の薬液を塗ることができる容器の開発に取り組んだ。「最終的には、容器の先端部に計量部と特殊なノズルを付け、1回当たりちょうど2mlの薬液が出る仕組みにしました。この容器ができるまでには5年の歳月がかかりました」と開発氏は語る。
さらにこの容器は、発売3年後に顧客のニーズに沿って改良を行っている。当初、頭皮に当たるノズル部分が硬質のポリプロピレン製だったものを柔らかいシリコンゴム製に変更したという。「簡単な操作でしっかりと定量塗布できる容器であるため、パーツとパーツの組合せが非常に繊細な設計でした。そこに、柔らかいシリコンゴムを組み込むというのは実は大きな冒険でした」と開発氏は振り返る。
時代の変化とともに進化を続ける「カロヤン」。今後もその動向から目が離せない。