教育の本質が問われる時代
魅力を競い、進化する大学へ
地域との連携、
面倒見が中小大学の強み
――中小規模の大学は、どんな方向に進んでいるのでしょう。
亀井 文科省が昨年公表した大学改革実行プランでは、地方の中小規模大学を意識して、大学が地域に必要とされる人材を養成し、地域の課題解決へ協力するなど、地域貢献を強める「センター・オブ・コミュニティ(COC)構想」を掲げています。
産業界が求めるコミュニケーション能力や主体性は座学ではなかなか身に付きません。米国では、企業での実習を大学側が管理して、単位認定も行うコープ教育が行われていますが、日本のインターンシップ制度は貧弱です。COC構想では、大学が地元の行政や企業と連携することで、教員と学生の力で地域課題解決に積極的に関与するアクティブ・ラーニングが可能になるかもしれません。
――中小規模大学ならではの長所はありませんか。
亀井 今の受験生の志望校選定には親の意向も強く反映される傾向があり、就職実績や面倒見の良さが重要な大学の魅力になっています。地元企業と良好な関係を築き、就職に強さを発揮する、一人ひとりの学生のしつけも含めた面倒見の良さで、高い評価を得ている大学もあります。ただ「面倒見の良さ」を訴える中小大学は多いので、受験生側は、退学率や具体的取り組み内容をしっかり吟味することが大事でしょう。
大きな変化の時代には
思い切った改革を
――グローバル化への対応も大学の課題ですね。
亀井 大規模有名大学は、もっと多くの留学生を呼び込む世界戦略が必須です。そのためには、アルバイトの斡旋など、きめ細かい留学生支援の提供が不可欠でしょう。中堅や小規模大学もグローバル化の影響から逃れることはできません。アジアをはじめグローバルな労働力と競って就職を勝ち取らなければならない時代がやがてやって来ます。週2~3時間の英語教育で英語での交渉ができるようなレベルの語学力が身に付くはずはありません。ネーティブスピーカーによる授業や留学制度の充実、地域の外資系企業との連携など、本気でグローバル化対応に取り組む必要があります。
――厳しさを増す環境の中で、大学は変化を求められているのですね。
亀井 入学者の減少による大学淘汰の時代を乗り切るために、大学は学部新増設を行うとともに、併せて思い切った改革に取り組まなければなりません。低コスト留学のために、韓国が先行しているフィリピンなどへの英語留学システムの開発などを考えるのも一案でしょう。大学の学費はどこもあまり変わりませんが、たとえばネット授業を活用してコストパフォーマンスに優れた大学という道もあるはずです。卒業後の就職先としてアジア諸国を視野に入れる大学など、これまでの大学に見られなかった動きも出てきています。ランキングだけでなく、社会に求められる人材を輩出するという高等教育の本質に真剣に向き合った個性的な取り組みが評価されることで、大学側としても、取り組みがいのある面白い時代になってきたと言えるでしょう。受験生も、大学の魅力、真摯な姿勢を見抜く目を養って欲しいと思います。